青山悟 刺繍少年フォーエバー | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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現在、目黒区美術館で開催されているのは、

“青山悟 刺繍少年フォーエバー”という展覧会。

目黒区出身、目黒区在住の現代美術作家、

青山悟さんの美術館では初となる大規模個展です。

 

 

 

青山悟さんは、展覧会のタイトルにもある通り、

工業用ミシンを用いて、刺繍で作品を制作するアーティストです。

展覧会タイトルのバナーの隣にぶら下がっているランプも・・・・・

 

 

 

実は、刺繍で制作されています。
(さすがに展覧会タイトルは、刺繍ではないですが)

 

本展では、目黒区内の駐車場をモチーフにしたという初期の貴重な作品から、

 

 

 

コロナ禍に制作された一連の作品群、

 

 

 

本展のために目黒区内の小学生たちと共同で制作した最新作まで。

 

 

 

実に多数で多彩な作品が紹介されています。

それらの中には、2014年から15年にかけて制作された《About Painting》も。

 

 

 

こちらは、青山さん流のポジションマップです。

縦の軸は、Radical―Conservative。

横の軸は、 Social―Personal。

そこに20世紀を代表する名画を配置していくというものです。

なお、作品はすべて刺繍で再現されています。

さらに、テキストもすべて青山さんの手描きです。

 

 

 

なお、今回の《About Painting》は、

目黒区美術館仕様にバージョンアップされており。

目黒区美術館コレクションも数点加わっていました。

(選ばれた作品は、実物も併せて展示されています)

 

 

 

また、もっともPersonalな作品には、

青山龍水なるマイナーな(?)洋画家の作品が置かれていました。

 

 

 

実はこの方は、青山悟さんの実の祖父。

二科会において東郷青児のもと、

常務理事まで登り詰めた洋画家なのだそうです。

本展では、そんな青山龍水と孫のコラボも実現していました。

 

 

 

左は、青山龍水が描いた少女の絵。

右は、その絵と同じ構図で、

刺繍で表現されたドイツのメルケル元首相です。

こうして並べてみると、メルケル元首相が少しだけ可愛らしく思えました(←?)。

 

 

ちなみに。

本展のサブタイトルは、“永遠なんてあるのでしょうか”です。

ザ・ブルーハーツの歌詞を彷彿とさせますが、

この言葉は、近年、青山さんが取り組んでいるテーマなのだそう。

時代とともに社会から姿を消そうとしているさまざまな「消えゆくもの」。

そういったものを刺繍で制作しているのだそうです。

例えば切符であったり、例えば雑誌であったり。

 

 

 

さらに、床に置かれたこれらもすべて、

“永遠なんてあるのでしょうか”のシリーズ作品。

 

 

 

落ち葉もタバコの吸い殻もすべて刺繍で制作されています。

くしゃっとなった展覧会のチラシも、もちろん刺繍。

 

 

 

こちらのレシートも、刺繍で作られています。

 

 

 

↑なお、この作品のタイトルは、

《Throw Away Receipt(2020年のマクドナルド)》とのこと。

確かに、言われてみれば、マックのレシートです。

264番の番号札が付いています。

 

 

さてさて、展覧会では他にも、蓄光糸を用いた作品や、

 

 

 

資本主義や労働問題をテーマに制作した作品など、

 

 

 

さまざまなタイプの作品が紹介されています。

刺繍作品の展覧会とだけ聞くと、

いわゆる刺繍の作品が並べられているのかと思うでしょうが、

青山さんの展覧会は、決してそう単純なものではありません。

刺繍という手法を用いた現代アートの展覧会。

唯一無二の世界観の現代美術展です。

星星

 

 

ちなみに。

個人的に一番印象に残ったのは、

「News From Nowhere」シリーズです。

 

 

 

「News From Nowhere」とは、ウィリアム・モリスによる小説のタイトル。

ある朝目覚めると、19世紀に生きる主人公は、

社会主義の実現した22世紀のロンドンにタイムスリップしていた?!

そんな『不適切にもほどがある』ような内容の小説なのだそうです。

それにインスパイアされたのが、こちらの「News From Nowhere」シリーズ。

19世紀の挿絵(本物)の上に刺繍が施されています。

 

 

 

女性たちが身にまとっているのは、

21世紀を生きる欧米のセレブたちのファッション。

この女性がに施されているのは、テイラー・スウィフトのものだそうです。

意外と違和感はありません。

 

なお、この女性が着ているのは、ビョークのファッションとのこと。

 

 

 

こちらは、違和感しかありません(笑)。

 

 

 

 

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