ロバート・A. ハインラインのSF小説「夏への扉」が山崎賢人さん主演でテレビドラマ化されるそうです。

 

本作がリリースされたのは1956年。

にもかかわらず、これ本当に1956年の作品?と、疑いたくなるほど色あせず、生き生きしたファンタジックな世界が広がっていて、魅力的。

 

いわゆるタイムスリップものですが、全編を通じたユーモアのセンスや普遍的なヒューマンドラマは今も輝きを失いません。

とにかく読み終わってじわっーっと心が温かくなる、そんな一冊です。

 

 

例えば文中に出てくる家事を引き受けるロボット「Hired Girl」などは一部ルンバを想起させます。

私が読んだのはペーパーバック「The Door Into Summer」ですが、和訳だと「文化女中器」と訳されているそう。

この和訳自体はいかにも昭和っぽくて、なかなかの名訳かもしれません。

 

 

山下達郎さん作曲・吉田美奈子さん作詞「夏への扉」というタイトルの楽曲がありますが、それは本SF小説をもとに作られました。

 

歌詞を見るとよくわかります。

 

♪僕は未来を創り出してる過去へと向かいさかのぼる

そしてピートと連れ立って君を迎えに戻るだろうだから

リッキー ティッキー タビーその日までおやすみ ..

 

ピートというのは本書のかなめとなる猫の名前、

リッキーというのも登場人物の名前です。

 

この曲なんとなく知っていたものの、歌詞まではあまり深く考えたことがなく、私の中でハインラインの作品と紐ついたのはずっと後のこと。

 

 

趣味を通じた知り合いに元・日本SF作家クラブの会長さんという方がいて、その方はその辺の事情に詳しく、聞いたところによると、この歌「夏への扉」は山下さんから難波弘之さん(SF作家・作曲家・歌手)に提供され、難波さんのセンス・オブ・ワンダーというアルバムの一部だそう。

 

しかもそのアルバムに収録されているのは小説のタイトルばかり。たとえば「アルジャーノンに花束を」や「ソラリスの陽のもとに」などなど。

 

 

ということで、こちら難波さんバージョンの「夏への扉」。

 

 

 

こちらはヤマタツ版。

 

 

 

いつ、どういうきっかけで本書を手に取ったのか覚えていないのですが、一時期紀伊国屋の洋書コーナーをうろつくのが好きだった時期があり、その頃買ったのだと思います。前評判を知って、というより、きっとタイトルに惹かれたのかも。

 

 

さて、山崎賢人さん主演のドラマの方ですが、さすがに設定は本書とは違い(原作の舞台は1970-2000年です)、1995-2025年の設定と聞きます。

この30年のスパンは不可欠なので、25年後倒しでスライドしているのですね。

 

正直、この作品を2度読んだので私の中ではイメージができていて、どちらかというと野暮ったくて、スマートではない、若いのに老成しているかのようなあるいはちょっとくたびれた男性像として頭にインプットされています。

 

なので山崎賢人さんというよりは若作りした唐沢寿明さんがイメージに近いんですけれど(笑)。

果たしてどんな感じに仕上がるのかお手並み拝見。

 

なにより活躍するはずの猫のピートの演技(?)にも注目です。

リッキーの配役も気になるなぁ。

 

 

「夏への扉」。タイトル同様、そして山下達郎さんの透き通る声同様、とても爽やかな気分になれる作品です。

今本書が唐突にドラマ化されるのは驚きですが、後世に受け継がれる名作であることを改めて感じます。

 

 

夏・・・ということで写真はある夏、横須賀美術館への道すがら。