アミューズとエイベックスの違い ~収益構造 | 投資は自己責任で

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音楽ビジネス(及び芸能ビジネス)への(国内での)株式投資は銘柄が限られます。具体的には、アミューズとエイベックス(エイベックス・グループ・ホールディングス、以下エイベックス)ぐらいしかありません。
ということで、アミューズとエイベックスを比較してみます。
 
2016年3月期 (単位は億円)
         アミューズ   エイベックス
営業収入  489億円    1,541億円
営業利益   60億円           73億円  
経常利益   59億円         61億円 
当期利益   35億円           43億円    (当期利益=親会社株主に帰属する当期純利益)
 
エイベックスの営業収入(売上高)はアミューズの3倍以上もあり、日本の音楽ビジネスを象徴しているかのような存在です。ただ、エイベックスの過去最高益は2013年3月期の経常利益131億円ですが、その後は減収減益が続いており、今期(2017年3月期)の業績予想の経常利益は50億円と、4期連続の減益予想となっていて、業績不振の感が否めません。
こうしたエイベックスの現状を以って、音楽ビジネスがすべて不調で、衰退傾向にあるかのように勘違いする人も多いように思います。「アミューズもBABYMETALという材料で一時的に株価は騰がったけど、音楽業界は先がないから、どうなんだろう?」なんて思っている人たちも、以外と多いのかもしれません。日本では「CD販売≒音楽ビジネス」と勘違いしている人も多いですしねw。
しかしながら、後述するようにエイベックスの業績不振の原因はアミューズの業績とはあまり関係のないところにあります。
 
上述したようにエイベックスの営業収入(売上高)はアミューズの3倍以上なんですが、経常利益、当期利益については両社ほとんど差がありません。これはエイベックスの利益率がアミューズに比べてかなり低いということですが、このことは両社の事業構造の違いによるところが大きいです。
 
アミューズの営業収入は、ライブなどのイベント収入とグッズ販売・ファンクラブ会員収入、新譜の印税収入等(アーティストマネジメント事業)が全体の約8割、新譜・旧譜の印税収入は全体の数%程度です。CD販売は手掛けておらず、パッケージ販売減少の影響はさほど受けない事業構造です。
一方のエイベックスは、イベント収入やグッズ販売・ファンクラブ会員収入等(マネジメント/ライヴ事業)、レコード会社(エイベックス・トラックスなどのレーベルがある、エイベックスミュージッククリエイティヴ等)としてのCDや配信による楽曲販売(音楽事業)、インターネットTVや動画配信など(映像事業)がそれぞれ3分の一ずつの売上となっています。
次にセグメント利益を比較してみます。
アミューズはアーティストマネジメント事業63億円、メディアビジュアル事業(映像制作・販売)0.5億円、コンテンツ事業(旧譜の印税収入)10億円、プレイスマネジメント事業(東京ワンピースタワー等)▲5億円と、アーティストマネジメント事業がかなり大きな割合を占めています。
一方、エイベックスでは音楽事業80億円、映像事業0.8億円、マネジメント/ライブ事業15億円と、音楽事業の割合が非常に大きいのが特徴です。
 
CD等のパッケージ販売は近年、減少傾向に歯止めがかからない状況です。インターネット配信が急成長しているもののパッケージ販売の減少に売上が追いつかず、配信の利益率が低いことも加わって、楽曲販売を行うレコード会社の利益が大きく圧迫される厳しい状況が続いています。
また、動画配信等の映像事業についても、将来有望なビジネスであると言われて久しいものの、なかなか収益化が進まず、苦戦を強いられている状況にあります。

つまり、エイベックスの不調は、音楽事業と映像事業に起因するということ。エイベックスはもともと音楽事業からの利益が大きい企業。CD販売で大きな利益を上げることが将来的に困難となることを見込んで、配信や映像事業に投資したものの、なかなか成果が上がらずに苦しんでいる、ということのようです。映像配信などは将来有望だとは思いますが、もたついているとNETFLIXやアマゾンの後塵を拝することになりかねません(なりかけている、といったほうがいいかもしれませんね)。

 
アミューズの場合は一貫して、ライブ・コンサートビジネスを主戦場として事業を展開しており、エイベックスのようなCD販売、音楽配信、映像配信はほとんど手掛けいていません。ライブ・コンサートビジネスが近年、急成長していることもあり、アミューズは無理に多角化を進める必要がない状況です。
 
ちなみにアミューズの過去最高益は昨年、2016年3月期で経常利益59億円。人気アーティストの大型コンサートが重なったことで対前年度比+44%とちょっと大きく伸びすぎたwことから、今期はその反動で減益予想となっていますが、アミューズの中長期的な成長トレンドは継続していると考えます。
その理由は以下の過去エントリを参照してください。
■音楽産業の収益構造の変化と"チケット即完売"の問題点について(2016/8/28)
■アミューズへの投資について(2016/9/19)
 
<<参考>>
■アミューズとエイベックスの違い ~ライブ、グッズ、ファンクラブ等