年金積立金の運用成績は最悪のケースを下回る水準 | たまき雄一郎ブログ

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本日公表された2018年度の運用利回りは1.52で、3年ぶりに目標未達となった。


しかも、前回の財政検証の、2055年度に積立金が枯渇するシナリオであるケースHの2.3を下回る水準で、事態は深刻。


運用利回りから名目賃金上昇率を差し引いた実質的な運用利回りは0.57%で、これもケースHの実質的な運用利回り1.0%を下回る水準。


運用は単年度で見るべきではないというが、言い訳に過ぎない。財政検証で示された年金財政上必要な運用利回りを「毎年度」確実に確保することを基本とすべきである。


単年度の未達分が出たらいったいどこで取り返すのか。将来の運用でなんとかしますでは心もとない。カナダのように保険料を引き上げたり、給付を減らすような短期で調整する仕組みを持つ国もある。将来の運用で未達分を取り戻せなければ、それはスライド調整の長期化で帳尻を合わすしかなく、要は、将来世代の年金減額によって埋め合わすことになる。


ちなみに、2001年度以降約20年間の比較的長期の運用成績である3.03%も、5年前の財政検証の8つのケースのうち7つのケースで示された想定を全て下回っている。中期的に見ても、運用成績が想定を下回り始めているのは深刻な問題だ。


とにかく、安倍総理が言うほど運用は堅調ではない。政府は、運用成績も含めた財政検証を速やかに出すべきだ。


加えて、2018年度のTFP(全要素生産性)上昇率の実績値は0.3%で、ケースHの0.5%にも及ばない水準。結局、前回の財政検証では想定していなかったぐらい最悪の状況で、いよいよアベノミクスの限界が露呈してきている。

 

運用成績は、将来の給付水準に影響する。目標未達の分(=年金財政上の損失)は、必ずどこかで帳尻を合わせなければならず、現行フレームで取り得る手段はマクロ経済スライド(自動的な実質減額)の長期化。マクロ経済スライドの長期化は、将来世代、とりわけ基礎年金により響くことになる。

 

そもそも、金融庁報告書の「2,000万円」はマクロ経済スライドを考慮しておらず、かつ受給額が高めの厚生年金世帯が前提となっている。

 

そのため、マクロ経済スライド+今回の目標未達(=年金財政上の損失)によるマクロ経済スライドの長期化で、いわゆる”赤字”はもっと膨らむと見込まれるし、とりわけ基礎年金世帯には極めて深刻な影響を与える。

 

積立金の本来のオーナーである被保険者(国民の皆さん)が知りたいのは、将来の年金の給付水準、特に基礎年金がどうなるかだ。


目標未達という深刻な状況なのに、なぜ運用結果だけがGPIFから公表され、政府は、財政検証を出さないのか。隠すことなく速やかに財政検証の結果を出し、将来の年金の給付水準を示すべきだ。

 

現在の世代が意思決定して出た損失について、政府が責任をとるわけでもなく、なぜ意思決定に参加していない将来世代が負わなければならないのか。


国民民主党としては、このような年金財政の実態、将来世代の年金水準の劣化の可能性も含め、年金問題の実相を明らかにし、それに向き合い、議論を進めていきたい。