「画力(えぢから)」という言い方 |  ときしらずのブログ◎迂闊な話         

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  「言葉」につての雑感。花や風景の写真。  



   
  

男性アイドルN.K.の冠番組に、事務所の後輩の若い男性アイドルA.D.がゲスト出演し、A.D.が出ているドラマの“番宣”をする場面があった(8月10日、日本テレビ)。目の動きで、“カンペ”を見ているのは明らかだった。

「がりょくのあるドラマ…」と言いかけて、A.D.は自信がなかったのか「えりょく…?」と、先輩に助けを求める風だった。

N.K.は、後輩のあわてぶりを笑って見ていたが、やがて強い口調で言った。

「えぢから、だろ!」

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同時に映し出された“カンペ”に「画力」という文字が書いてあった。N.K.は、この文字を「えぢから」と読んだのである。“カンペ”に使われるくらいだから、「画力(えぢから)」は、テレビ関係者の間では常識の言葉なのかもしれない。後輩の若いアイドルは知らなかったわけであるが、自信に満ちたN.K.の様子からもそのように思われた。多分、いわゆる業界用語の類なのではないだろうか。

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「画力(えぢから)」という見出し語は、『広辞苑』など手元の辞書には載っていない。「画力(がりょく)」や「画力(えりょく)」も、ない。

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「画力(えぢから)」と聞いて思い浮かんだのは、「目力(めぢから)」という言い方である。私は先に、「眼力(がんりき)」との対比で、「目力(めぢから)」という言葉について書いたことがある(2013/2/6、ブログ『「眼力(がんりき)」と「目力(めぢから)」』)。ちなみに、「目力(めぢから)」の意味は、『明鏡国語辞典』第二版では次のようになっている。

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  めぢから【目力】

    〔名〕

    〔俗〕相手に強い印象を与えるような目の魅力。

    「 ― のある人」「 ― をアップさせるメイク」

    (〔俗〕とは、「俗語(卑俗な語、新しい語)」の意味である。引用者)

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そこで、推測するに、「画力(えぢから)」の「画(え)」とは、テレビや映画の「画面(がめん)」のことだろう。「画面(がめん)の力(ちから)」=「画力(えぢから)」とは、さしずめ、「強い印象を与えるような画面(がめん)の魅力」といったところだろうか。そして「絵力」という漢字でないのは、絵画の「絵」ではないからであろう。

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ところで読みが、音読「画力(がりき)」とか湯桶読み「画力(えりき)」でもなく、A.D.が読んだような音読「画力(がりょく)」や湯桶読み「画力(えりょく)」でもなく、訓読「画力(えぢから)」という言い方であるのは、何故なのか。それはおそらく、話し言葉として聞いて分かり易いからであろう。つまり、「漢語」より「和語」のほうが聞いて分かり易いからであろう(2012/6/9、ブログ『和語への転換』をご覧ください)。