私がこの世で一番好きな漫画は「火の鳥」です。

10万円もする完全版を買ってしまう位に、魂に刻み込まれた至高の名作。


残念ながら未完のまま手塚治虫先生は旅立ってしまわれましたが……



何と、その未完の部分をゲームとして作った作品があるというではないですか!


Wikipediaの「火の鳥」の項目には以下のように記されています。

「アトムはロボットであり、不死の存在と言える。その魂は、最終的には、火の鳥に救われるのではないか」と言うことと、「意識していたわけではないのだが、お茶の水博士はその容貌からして、猿田の血を引いていると思う。彼はアトムの最期を見届けることになるだろう」と語っている。長く手塚のチーフアシスタントを務めた福元一義によれば本編が完結編となる予定だったとある。この構想の一部が2003年のゲーム「ASTRO BOY・鉄腕アトム -アトムハートの秘密-」に生かされている

アトム生誕の年、2003年に出たという「ASTRO BOY鉄腕アトム アトムハートの秘密」!やらずにはいられないッ!


という訳で、探し求めて500円で買って来ました。



「ロボットにも命があるのですか?」

「では命とは何ですか?」



この作品、パッケージだけ一見するとアトムのアクションゲームなんですが……



その実、「手塚治虫作品オールスター」的な、クロスオーバー作品なのです!



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ブラックジャック先生も!



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写楽保介も!



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七色いんこも!



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サファイアも!


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ワンダースリーも!



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当然、火の鳥だって!



各作品のキャラが無理なく登場し、役割を担って一つの考えさせられる物語を紡いでいく……


もう、この時点で手塚治虫ファンからすれば堪らないですよね。



更に、クリアすると究極キャラクター名鑑という物が閲覧できるようになるのですが……

その濃さたるや半端じゃない!


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「プライムローズ」のエミヤ



例えば、アトラスの紹介では


80年版の青年アトラスのデザインは、「スタジオぬえ」の宮武一貴さんの手によるもの。


等の、かなりマニアックな情報も掲載。

私も初めて知るような事が沢山書かれていました。

手塚ファンはこの名鑑を読んでるだけで幸せになれると思います。



随所からスタッフの手塚作品愛がひしひしと伝わって来て嬉しいです。

メディアミックスとは斯くあるべし、という素晴らしい見本。



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この、手塚治虫大全集の表紙を模した各章の一枚絵も、本当に愛が伝わってきますね。

丁度、浦沢直樹さんの「PLUTO」でも描かれた部分なので、このシーン自体にも高まりますし。



ゲームとしては、ロックマン的なオーソードックスな2Dアクション。

癖がなく誰でも遊べつつも、意外と出来る事は多くて楽しいです。


ゲームシステムも含めたレビューは、こちら のサイトが参考になります。


難易度は「かんたん」「むずかしい」から選択可能なので、ライトユーザーの方でも大丈夫でしょう。


システム周りもよく練られていて、ほんの数分のプレイにも対応しています。

アクションゲームとしては珍しくオートセーブ機能を完備。

ユーザビリティへの拘りも感じました。


そして、ゲーム自体に為されたとある仕掛けが……


完全なネタバレになるので別に記しますが、エンディングにとても感動しました。

これは間違い無く、手塚作品の系譜上の感動です。


もう、文句の付け所を探す方が難しい作品。

終盤に致命的でないバグがある位でしょうか。


これは本当に神ゲーです!


「1000円以内で買える神ゲー」という紹介も為されていましたが……

今まで知らなかったのが勿体ないと思える素晴らしい作品でした!



90点。



以下ネタバレ。















感動のEDの文を、備忘録として書き記しておきましょう。



お父さん
どうして人間はいつまでも、にくしみあうの?
どうしてあらそいがなくならないの?

それが人間の限界なのだよ。トビオ
人間には、くらやみの中から、未来をてらし出す情熱の炎がある。
だがそれは、みずからを焼きつくす危険な炎でもあるのだ。
人間は一人ぼっちだ。
くらやみの中でたった一人、恐ろしさのあまり炎をふりまわしては、みずからを傷つけている。
どこから来て、どこへ行くのか、自分でもわからない。
…ともだちが必要なんだ。
くらやみの中で、いっしょに炎をささえてくれる仲間が。
だから私はそれを…人間もロボットもこえる科学の子を、この手で作ろうとしているんだよ。

その子の名前は?

アトム…。
そう名づけようと思う。
「けっして分けることができないもの」という意味のギリシャ語だ。
どんなときも、人間のそばにいてくれるように。
弱くておろかな人間と、ともに歩んでくれるように。
それはきっと、おまえたちにとってすばらしいともだちになるだろう…。

うん!ぼくはきっとその子と…
アトムといっしょに行くよ
どこまでも行くよ…。


トビオよ、観ているか。アトムだ。
あれが、おまえのアトムだ。
アトムよ、人間を超えろ!
国家や民族を!
思想や宗教を!
飢餓や貧困を!
戦争を!
人間の産み出した、くだらないものすべてを、超えて飛べ!
おまえは飛ぶのだ!
人間が超えられなかった高みへ!
おまえは行くのだ
人間が行けなかった未来へ!

原作も読んでいると、余計に感動しますね。

( ;∀;) イイハナシダナー



欲を言えば、ブッダやどろろ、アドルフに告ぐやヒョウタンツギ、おむかえでゴンスなども登場して欲しかった所ですけれど、綺麗にお話が纏まっているので良しとしましょう!