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『国の借金シンドロームの治療(後編)①』三橋貴明 AJER2015.2.24(3)

http://youtu.be/_OAuQJWGWCc

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一般参加可能な講演会

3月28日(土) 12時より『シンポジウム「台湾映画『KANO』にみる、忘れられた台湾史と今の日本人に求められるもの」』 文京区シビックセンターにて。

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 明日は文化放送「おはよう寺ちゃん活動中」に出演します。
http://www.joqr.co.jp/tera/


 GDPとは、国民の所得の合計です。


「国民が働き、モノやサービスという【付加価値】を生産し、【消費・投資】として支出し、【所得】が創出される」
 ため、付加価値の生産、消費投資という支出、所得の分配の三つの「GDP」は必ず一致します。生産面、支出面、分配面の三つのGDPが一致する。「GDP三面等価の原則」です。


 さて、あまり取り上げることがない「分配面のGDP」は、雇用者報酬(皆さんに支払われる給与など)、営業余剰(企業に残る利益)、固定資本減耗(減価償却費)、間接税、▲補助金の合計になります。雇用者報酬が増えていれば、少なくとも、
国民に支払われる報酬の総額は増えている
 という話になります。


 パソナの取締役会長の竹中平蔵氏と、法大の山口次郎教授が、興味深い討論をされていましたので、ご紹介。


格差問題で竹中平蔵氏「正規が非正規を搾取」
http://www.yomiuri.co.jp/economy/20150302-OYT1T50149.html?from=ytop_main6
 竹中平蔵・慶大教授と山口二郎・法大教授が2日、BS日テレの「深層NEWS」に出演し、安倍首相の経済政策「アベノミクス」を巡る格差の問題について議論した。
竹中氏は、「雇用者報酬が実質で増えていることは重要。日本でも(格差が)拡大しつつあるが、世界の中で見れば客観的に低い」と強調。そのうえで、「正規が非正規を搾取する構造になっている。正規と非正規の壁をなくさなければいけない」と述べた。
 一方、山口氏は、「個人消費が伸びず、実質賃金も低下し続けている。マクロ経済の数字の改善が(国民経済の)成功指標であるという関係は21世紀に入って崩れた」と指摘。「普通の働く人に力点を置かなければ、経済回復の道筋は描けない」と訴えた。』


 竹中氏が持ち出した「雇用者報酬の実質値」とは、実質値の分配面のGDPにおける雇用者報酬だと思います。内閣府は実質値の雇用者報酬のデータを発表していませんので、わたくしがGDPデフレータから計算してみました。


 94年以降の雇用者報酬「名目値」「実質値」そして「GDPデフレータ」のグラフでございます。


【日本の雇用者報酬の名目値・実質値(左軸、十億円)とGDPデフレータ(右軸)】

http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_49.html#Koyosya


 日本の雇用者報酬の名目値は、97年の橋本政権をピークに下がり続けています。ところが、同じ時期に「デフレーション」が進んだため、GDPデフレータというインフレ率はマイナスで推移しました。


 結果、04年以降に雇用者報酬の実績値は、計算上は「増えているように見える」わけでございます。


 興味深いのは、同時に山口氏が語っているように、実質賃金は低下を続け、個人消費が伸びていない点です(特に、消費税増税以降)。

 結局、どういう話なのか。複数の現象を関連付けて見る必要があります。


・橋本政権が緊縮財政を実施した97年以降、デフレで「雇用者報酬の名目値」が下がっていった
・とはいえ、GDPデフレータがマイナスで推移したため、計算される雇用者報酬の実質値は上昇して見える
・すなわち、実質値で見た雇用者報酬の「総額」は増えているように見える。
・ところが、一人当たりで見た実質賃金は下落を続けた


 さて、なぜでしょうか。「実質値の総額が増えているにも関わらず、実質賃金が下がり続けた」以上・・・・。給与所得者が増えたのでございますね。それでは、なぜ給与所得者が増えたのか・・・。
 などなど、今月の経済塾で取り上げたいと思います。


 いずれにせよ、上記の竹中氏と鈴木氏のやり取りを読んで感じたのは、「双方が中途半端」という点です。特に、竹中氏が「雇用者報酬の実質値」だのと、非常にマイナー(しつこいですが、内閣府も発表していない)な指標を持ち出したのは、興味深いでございます。

 山口教授にしても、マクロな数字の改善が国民経済の成功と「イコール」にならないというのは同意しますが、マクロな数字の改善がミクロの改善になっているケースもあるわけです。例えば、実質の雇用者報酬が増え、さらにそれ以上のペースで名目の雇用者報酬が増えているならば(つまりは、GDPデフレータがプラスならば)、相当程度の確率で、実質賃金が上昇に転じているわけでございます


 ともあれ、竹中氏の、
正規が非正規を搾取する構造になっている。正規と非正規の壁をなくさなければいけない
 が、「非正規の待遇を、正規に合わせる」というならばともかく、これまでの氏の実績からして間違いなく逆の方向(正規を非正規に合わせる)でしょう。現在の日本において、非正規雇用を増やす政策(労働規制の緩和など)は、デフレ脱却に悪影響を与え、国民をさらに貧困化します。


 しかも、竹中氏は上記を「非正規雇用で働いている人たちのルサンチマン」を煽る形で実現しようとしているように見え、全く同意できないという言葉で締めさせて頂きます。


「正規の待遇を非正規並に落とす労働規制の緩和に反対する」に、ご同意下さる方は、

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