文政権の誤った経済政策で韓国経済は下落を続けていた。そこに新型コロナの世界的な経済危機をむかえ、韓国に投資していた投資家が手仕舞いをし資金を引き揚げようとしている。保有している外貨約4,090億ドルから外国投資家に支払わなければならないが、外貨準備高の内訳が問題だ。

 1月末時点の証券(Securities) 3,850億ドルを、2月 138億ドル、3月 136億ドル、計274億ドルを取り崩し、預金に代えている。そして、この2ヶ月で準備高を88億ドル(3月は90億ドル)減少させている。貿易などによる流入もあるので外貨流出の詳細は分からないが、証券取り崩しの274億ドルに相当する外貨流出に備えていたことになる。残る 3,576億ドルの証券があるから安心出来る訳ではない。日本政府の場合、外貨準備高の証券(90% 1兆1619億ドル:財務省2月末発表)のほとんどが米国債のドル資産であるので信用が高い。韓国の場合、米国債保有が少なくハイリスク・ハイリターンの証券が多くすぐ換金できない。
 下記の米財務省の米国債保有国一覧表(1月末)を見ると、日本は 1兆2,117億ドル、韓国は 1,159億ドルである。この米財務省の統計は、官民合計の数字であり、政府保有額は各国の政府発表によるが、韓国政府は証券の内訳を発表していない。2008年のリーマンショックからこの証券の動きを見ているが、韓国政府(韓国銀行)の保有する米国債は、500~600億ドルと見積もられている。(官民の保有比率は半々)

聯合ニュース 4月3日
韓国の外貨準備高 約90億ドル減=リーマン・ショック以来の下げ幅
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20200402004700882
韓国3月末外貨準備高(4月3日韓国銀行発表)

http://www.bok.or.kr/eng/bbs/E0000634/view.do?nttId=10057437&menuNo=400069
日本2月末外貨準備高(財務省発表)
https://www.mof.go.jp/international_policy/reference/official_reserve_assets/0202.html
米国債の外国保有リスト(米財務省発表)
https://ticdata.treasury.gov/Publish/mfh.txt

 韓国政府は4000億ドル超える外貨準備高を保有しているがその内訳は換金出来ない証券が多くあり、外国投資家の資金引き出しにおびえている。

 下表は「International Investment Position(End of 2019」(韓国の投資活動)をあらわし、資産(A.Assets)は、韓国の外国投資と外貨準備である。直接投資(Direct investment)、株式・債券への投資(Portfolio)、デリバティブ、その他投資、外貨準備(Reserve assets)。負債(B. Liabilities)は外国から韓国への投資。

http://www.bok.or.kr/eng/bbs/E0000634/view.do?nttId=10056585&menuNo=400069&searchWrd=International+Investment+Posit&searchCnd=1&sdate=&edate=&pageIndex=1

 問題は、B. Liabilities(Foreign investment in Korea)の2. Portfolio investment・ポートフォリオ(証券)であり、2019年末 7,413億ドルあり、2018年末より1年間で747億ドル増加している。2017年~18年は 1,073億ドル減少し 1,000億ドルを超える外貨流出は通常時でも発生しているので今回の新型コロナの影響はさらに大きくなり、約7,000億ドルの資金が流出する訳ではないが、2,000億ドルを超えるレベルになる可能性がある。(下記の2009年、2011年の分析)
 しかし、韓国銀行には換金出来ない証券を保有しているため預金が払底し支払えない、つまりデフォルトを起こす可能性が高い。そこで、韓国政府は、日本に対し通貨スワップを呼びかけているが、これまでの日本に対する振る舞いから日本政府は交渉に応じるような状況ではない。FRBから借りた600億ドルは市中銀行への貸し出しすることにより、主に貿易決済に使われると考えられるので、為替介入に使える自己資金(外貨準備高)はその分余裕が出来そうだ。

(2008年~2009年)
 なお、リーマン・ショックが起きた2008年9月直前の8月に外貨2,432億ドルを保有、最少になるのは11月の2005億ドル、3ヶ月で427億ドルが流出した。このうち証券は、2008年9月2,172億ドルから462億ドル減らし、2009年1月1,709億ドルの最少値を示した。
 米財務省の米国債外国保有高の発表によれば、韓国は官民合わせて313億ドルの米国債を保有していた。韓国銀行の保有する1,709億ドルの証券の中に200億ドル程度の米国債が含まれていると推定すると、2009年1月2月には、米国とのスワップ枠60億ドルも使用していたので、換金出来ない証券が約1,500億ドルあったと考えざるを得ない。その中身を韓国政府と韓国銀行は一切明らかにしていない。
(2011年)
 2011年の欧州金融危機の際、日韓700億ドル中韓560億ドル、合計1,260億ドルの通貨スワップ協定を結んだ。2011年韓国が保有する外貨は約3,000億ドル、そのうち換金困難な証券が約1,500億ドル(上記2009年)、収益性資産(リスクのある国債含む)約1,000億ドル、換金性の高い米国債など約300億ドル、預金約200億ドルであり、外貨流出に対応できるのは、合計500億ドル程度であった。日中との通貨スワップと合わせて1,760億ドルを用意していたことになる。現在の準備高総額4000億ドル・レベルなので、2000億ドルの流出を想定しているのだろうと推測する。
2015年投稿「韓国外為管理の謎」

https://ameblo.jp/study-houkoku/entry-12076121725.html

https://ameblo.jp/study-houkoku/entry-12076481699.html

https://ameblo.jp/study-houkoku/entry-12076556747.html

 

 世界中特に米国の金融当局は、このような韓国の外貨準備に不具合があることを理解しその改善を求めていたのだが、日韓スワップを口ずさむということは改善が進んでいなかったということになる。

 そのデフォルトの恐怖(1997年アジア通貨危機)が各国との通貨スワップ協定締結への働きかけである。外国投資家は当然国際決済通貨特にドルを要求するので、韓国のすすめているローカル通貨国とのスワップは相手国との貿易決済に使えるが、国際投資家の要求には応えられない。

韓国のローカル通貨スワップ:中国(中国は契約更新を行ったとは公表していない)、インドネシア、マレーシア、オーストラリア

 米国とは、2008年のリーマンショック時に300億ドルの通貨スワップ協定を結び、為替介入を行って通貨危機を乗り越えた。その後、米国は韓国との通貨スワップ協定を拒否したため、日本や中国に通貨スワップ協定を要請した。日本とは2012年に契約が切れた。しかし、韓国は何度も上から目線のスワップ協定交渉の呼びかけをしているが日本は応じていない。

勝又氏の解説
『韓国、「未練たっぷり」首相、日韓通貨スワップ協定望ましいが「日本次第」』
https://ameblo.jp/katsumatahisayoshi/entry-12585497333.html

 今年に入り、韓国経済の落ち込みに、外貨不足が予想され、韓国政府の日韓通貨スワップに関する言及が多くなった。しかし日本政府は応じていない。
中央日報 3月30日
麻生氏、韓日通貨スワップに言及 「誰が頭を下げて金を貸すか」
https://japanese.joins.com/JArticle/264227
ロイター 3月31日
韓国側の通貨スワップ再開の意向、直接聞いてない=麻生財務相
https://jp.reuters.com/article/aso-korea-japan-idJPKBN21I09P

 新型コロナウイルスによる通貨危機に対応するため、米国のFRBが外貨不安のある9ヶ国の中央銀行と、6ヶ月後返済の為替スワップ契約を結んだ。そのなかに韓国が入り、600億ドルの枠を与えられた。これはドルの貸借契約であり、政府間の通貨スワップではない、そのため、為替操作には使えない。中央日報はローカル通貨のスワップと合わせ1,932億ドル相当以上の準備ができたと喜んでいるが、外国投資家が求めるのは、ドル、ユーロ、円であり、1,932億ドル相当のほとんどが外国投資家の要求に応えられない。
中央日報 3月20日
韓国、米国と最大の通貨スワップ…「ドル安全弁」 1932億+αに増えた
https://s.japanese.joins.com/JArticle/263891

FRBの発表 3月19日
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20200319b.htm
 3月末、韓国銀行は120億ドルの資金供給を韓国内市中銀行に行おうとして入札公告を出したが、落札したのは87.2億ドルであった。(84日満期 79.2億ドル、7日満期 8億ドル)このように、韓国銀行は直接為替市場にFRBから借りたドルを供給できないのである。
韓国銀行発表 4月1日 為替スワップの入札結果
http://www.bok.or.kr/eng/bbs/E0000634/view.do?nttId=10057414&menuNo=400069&pageIndex=1

 ウォン・ドルの為替相場は、1月中旬1ドル 1,160ウォン・レベルであったが、2月以降急速に下落、3月19日には1,290ウォンを突破した。FRBの為替スワップ契約で、一時ウォンが値を戻したが、FRBから借りたドルのうち120億ドルを市中銀行に供給するというニュースが報道されると、韓国銀行の支払えるドルが払底したかと思われ、乱高下が続いている。韓国銀行はこの一ヶ月、90億ドル以上を為替市場に投入し、レート維持を行ったと思われる。手元に残った預金は 317億ドル。4月はどのように動くのだろうか。4月15日の総選挙まで持ちこたえられるか。
米ドルとウォンの為替相場(チャート)
https://jp.investing.com/currencies/usd-krw