今回の総選挙で集団的自衛権について議論がありました。私は終始一貫「法文上は合憲。ただし、国会審議を聞いていると運用違憲となる可能性がある。」という言い方をしました。選挙公報にも概ねこういう言い方をしました。このブログを見ていただければ分かりますが、ずっとこういう感じです。

 

 集団的自衛権発動用件である存立危機事態の定義は、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」です。

 

 まず、重要なのは「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」なのであれば、それは当然、自衛権行使になるはずです。これを否定する人は居ないと思います。個別的自衛権については、我が国に対する武力攻撃が生じれば、当然、こういう事態になるわけですから、いわずもがなといったところです。なので、法文上は合憲です。

 

 ここで問題となるのは、①「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し」た時に、そういう事態が起きるか、②「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」は何処まで広がるのか、この2点です。この2点は密接に関係します。

 

 ①については、可能性は極めて限られますが、絶対に無いとまでは言えないと思います。武力攻撃予測事態の中にはそういう可能性があり得ます。例えば、日本海で米軍と何処かの国が海戦をやっていて、戦況が不利となり、どう見てもあと数時間したら防衛線が破られそうだ、という状況です。さすがにそういう事態であれば、自衛権発動でしょう。ただ、対象としても、時間的にも極めて限定的な事態だと思います。恐らく公明党はこういう理解で、存立危機事態について合意しているはずです。

 

 ただ、気になるのは、国会答弁を聞く限り、②の範囲がどんどん拡大している事です。上記で書いたようにかなり限定的な可能性を認めたにもかかわらず、そこが拡大していくのであれば運用上違憲となる可能性が高いです(阪田元内閣法制局長官も同様な事を言っています。)。私は法案審議の際に維新が提出した修正案がとても良いと思っています。

 

 維新の対案は「条約に基づき我が国周辺の地域において我が国の防衛のために活動している外国の軍隊に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険があると認められるに至った事態」でした。合憲性という意味合いでは、これでパーフェクトだと思います。実はこれくらいは賛成すべきだと内部で主張したのですがダメでした。失望感があったのを思い出します。

 

 という事で、集団的自衛権の扱いについては、法文上、これを違憲というのは相当に難しいと思います。どうしても定義の曖昧さが気になるのであれば、維新の対案がベストです。そういう議論を展開すべきだと今でも信じていますが、どうもこういう緻密な議論は嫌われるようですね。