シェイプとポッドについて | 井上正幸のブログ

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シェイプやポッドが今までの戦術と違うのはリサイクルを重ねることで防御を崩していく
というところです。
シークエンスは、フェイズ数や次のプレイが限定されており、ゲインすることで防御を崩
すことを考えますが、シェイプやポッドはオフサイドルールを利用し、速いリサイクルで
防御のアライメントが完了するまでの時間(二秒以内)に次の攻撃を開始することで防御を
攻撃側の「後追い」といった状態に追い込み、防御を崩していく戦術です。
後追いの状態にするために攻撃側は先にポジショニングしており、その形態がポッドとシェイプで異なってきます。
オフサイドルールを利用し、攻撃側の選手は動かずボールを左右に動かすことで防御側の
選手を動かすのがポッド、ボールだけでなく人が動くことで防御を誘導するのがシェイプ、これが簡単な2つの戦術の違いです。
二秒以内の速いリサイクルでブレイクダウンからボールを出すと、防御のポジショニング
は完成しないので、次に攻撃するであろうポイントを防御側は予測します。
2007年全身運動反射全国平均で0.359秒。トップアスリートで0.3秒として、防御側が攻撃
側に反応しようとすると、どれだけ反応が速くても0.3秒先に進まれてしまいます。その
ため防御側は、オフサイドラインの後方で攻撃側より先回りしてポジショニングします。
ラグビーはボールを持って走るという特性を持っているために、ブレイクダウンができる
と防御側はボールを中心にポジショニングしていきます。
この原則を利用して速いリサイクルでボールを出すと、パスのスピードは人が走るより速
いので、ボールを中心にポジショニングしていくとボールがスペースに到達する方が速い
という理屈から生まれたのがポッドです。
しかも、ラインの外側でバックスの選手とフォワードの選手のミスマッチを防ぎたいので、足の遅いフォワードの選手(プロップ)をブレイクダウン周囲にポジショニングさせようと
するので、ボールを大きく動かすと足の遅いフォワードの選手のポジショニングは遅れミ
スマッチを作ることもできます。

ポッドは、攻撃するチャンネルを限定して、攻撃側の選手はチャンネル内でしか動かず、ボールだけ左右に動かす戦術です。簡単に言うとグランドを縦に三分割して分割されたそれぞれのポッドにフォワード、バックス入り交じらせてそのポッド内の選手でリサイクルを行い、他のポッドの選手はリサイクルに参加せず次の攻撃に備えてポジショニングします。
防御側はボールを追いかけてポジショニングしますが、攻撃側は決まったチャンネル(ポッド)に防御側よりも先にポジショニングしているので、チャンスのあるチャンネル(ポッド)にボールを運んで、防御側をどんどん「後追い」にして防御を崩していきます。

シェイプは順目側に連続移動攻撃を仕掛けるので、防御側は順目側に連続的に移動するこ
とに動きが限定されます。 順目側に攻撃を連続させることで防御を誘導することを意図しています。
シェイプはポッドのようにそれぞれのユニットが独立した横並びではなく、重なりあってポジショニングするので、防御の的を絞るのが困難になっており、プレッシャーの弱いシェイプを連続的に攻撃することで防御を誘導していきます。

シェイプも攻撃するチャンネルは三つですが、ポッドのようにグランドを三つに分割するのではなく、ハーフユニット、スタンドユニット、センターユニットという形でそれぞれの意思決定者の立ち位置に応じてポジショニングが決定されます。それぞれ、インサイドの9シェイプ、ミッドフィールドの10シェイプ、アウトサイド12シェイプとしています。
例えば、攻撃側は9シェイプを連続させることで防御側に9シェイプを予測させ、インサイドに防御を集中させたところをミッドフィールドやアウトサイドを攻撃して防御を崩します。防御をこのように集めることを「グルーピング」といいます。
逆に12シェイプで展開されても崩されないように防御側が広がってポジショニングしてい
る場合は「ストレッチ」された状態と言い、9シェイプでインサイドを攻撃して防御を崩
します。

ポッドは、ポジショニングが遅れたスペースへ仕掛けながらボールを運ぶスキルを必要と
するので、小さい頃から身近にラグビーがあり、そういったスキルの高いニュージーラン
ドに向いていて、シェイプは、意図的に防御をコントロールして空いたシェイプに適切な
ムーヴを使って防御を崩す戦術であり、シークエンスという土台もあり局面を繋ぎ合わせ
る思考が得意なオーストラリアに向いていると私は考えます。