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毎度お騒がせしております。
キングコング西野亮廣です。

今年の夏頃から何かとネガティブなニュースが続いている吉本興業が「2020年1月から所属タレントの交通費を全カットの方針で話を進めている」という新ネタをブチ込んできて、芸人界隈がザワついています。

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基本、数年後に資産にならないような「時事ネタ」は取り扱わないのですが、このニュースに関しては、改善次第で皆が前に進めるネタなので、取り扱いたいと思います。

 
それでは、このニュースの解説、そして解決方法をお話しします。

 
2019年夏の「闇営業問題」の影響

お察しのとおり、今年の夏の「闇営業問題」の影響は多分にあると思います。
(嘘か誠か)聞くところによると、吉本興業は、世間の方からの声や、芸人サイドの声を汲んで、「数万円以下の直営業は、事務所がパーセンテージも取らない」という形でOKにしているらしいです。

直営業というのは友達の結婚式の司会の依頼とかです。
そこが若手芸人の生命線になっていたりするので、吉本興業も「額が小さい分には目をつぶるね」としたわけでね。

そのかわり、依頼主が反社の人間だったら、またやっかいなコトになるので、直営業の内容を会社に逐一報告することは義務づけています。

ここで、吉本興業は「反社チェックのコスト」を支払っています。
額の小さな直営業では吉本興業には一円も入らないのに、吉本興業は反社チェックのコストを支払っているわけです。

これが本当だと僕は結構反対で、この動きが活発になればなるほど、吉本芸人の活動母体(吉本興業)が疲弊するので、長い目で見た時に吉本芸人的にはマイナスなんですね。
直営業が増えれば増えるほど、吉本興業の出費が増えて、そのシワ寄せは吉本芸人の吉本社員にきます。

ですが、おそらく多くの芸人や世間は「目先の利益」しか議論しません。

船底に穴が空いているのに、その修理は誰かに任せて「このディナーは、もっと安くなるだろ!」とシェフに交渉を迫っている感じです。
船が沈めば、美味しいディナーも食べれません。


「エージェント契約」の弊害

その最たる例が少し話題になりました「エージェント契約」です。
詳しくはコチラのニュースをご覧ください↓

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添付したニュース記事を読んでいただいた前提で、話を続けます。

吉本興業は全国に「劇場」を持っていて、吉本芸人はこの「劇場」から生まれています。
明石家さんまさんも、ダウンタウンさんも、ナインティナインさんも、劇場で生まれ、劇場で芸を磨き、世に出ていかれたわけです。

そして、これは意外と知られていないのですが、劇場運営というのは基本赤字です(例外もあります)。
若手芸人が2000~3000円のチケットを完売させて単独ライブをおこなっても、家賃やスタッフの人経費を差っ引くとマイナスなんです。


それでも吉本興業の「劇場」は今日も元気に回っています。
では、その赤字分をどこで補填しているかというと、売れている先輩の売り上げです。

ダウンタウンという天才コンビを生んだ『心斎橋筋2丁目劇場』は、もともとダウンタウンさんの売り上げだけで回っていたわけではなくて、ダウンタウンさんより先輩の売り上げの一部に助けてもらって回っていたわけですね。

吉本興業というのは、売れている先輩が新人の養育費を払うエコシステムで回っている会社なんです。

この中、売れている先輩が「エージェント契約だ」「俺の売り上げは俺のもの」としたら、「劇場」に回すお金が減るので、当然、クビが絞まるのは「まだ売れていない新人芸人」です。


 
そんなこと言ってる西野も「エージェント契約」じゃね?

かくいう僕も、4~5年前から「エージェント契約」で、僕は『株式会社NISHINO』という会社で活動しています。
絵本の個展だとか、学校建設、オンラインサロン運営などは『株式会社NISHINO』預かり。
これからスタートする美術館建設や、広告代理店業も全て『株式会社NISHINO』の仕事です。


吉本興業の仕事は全体の1割にもなりません。

ただ、僕は劇場生まれの芸人で、それなりに吉本興業には恩がありますので、それなりに吉本興業に還元したいと思っています。
生々しい話をすると、吉本興業の利益を作りたいと思っています。
(※4年前に「僕とオンラインサロンをやろうよ」と持ちかけたけど、「よく分からないので、勝手にやってください」と吉本社員から断られたよ。勿体ないね)

その一つとしてやっているのが、吉本興業発のクラウドファンディング『シルクハット』です。

クラウドファンディングのプラットフォームを作って、運営、宣伝し、僅かではありますが、「クラウドファンディングの手数料」という形で吉本興業に利益が入るように設計させてもらいました。


世間や多くの芸人は「会社の利益」を後回しにして(なんなら吉本興業を悪者として)意見をするので、世間の声や芸人の声をそのまま採用したら、吉本興業の財布が疲弊するのは当たり前の話。
その結果が、「今回のタクシー代のカット」です。
タクシーの領収書を集めて、整理するのとか、人件費がかかるので。

たぶん、ここまで順を追って丁寧に説明すると、タクシー代のニュースを見ても「吉本ふざけるな!」とはならないと思います。
この状況を作ったのは、世間と吉本芸人なので。
(※本当はTVのワイドショーで、この話ができるタレントさんがいるといいよね)

さぁ、どうする?

まさか、ここで「自業自得だろ」と切り捨てるつもりは1ミリもありません。
基本的に僕は弱い側につくのが好きで、ピンチを激しく好みます。

この場合、僕は吉本興業を応援します。

過ぎたことをグチグチ言っていても仕方がありません。
今、吉本興業やらなきゃいけないのは「吉本の新しい収益源を作る」ということだと思います。
すっごいシンプルな解決方法です。

まず、結論から申し上げますと吉本興業は「経営危機」ではありません。
躓いている部分は、「吉本社員が、吉本興業という会社のポテンシャルを低く見積もりすぎてて、その機能を上手く使えていない」の一点です。
「お金にできるところがたくさんあるのに、お金にしていない」という話ですね。

こういう時は一か八かの勝負をしてはいけません。
手持ちの武器を確認して、リスクがゼロで、確実に勝てる戦を選ぶべきでしょう。
「リスクがゼロで確実に勝てる戦」なんて、基本、存在しないのですが、それが存在するのが吉本興業です。
そのことに、ほとんどの社員が気がついていません。


吉本興業の社員の皆様へ

吉本興業の社員の皆様はこの文章を読まれていることでしょう。
生意気言うようですが、僕の言うとおりにすれば確実に勝てるので、余計にアレンジせずに、そのまま実行してください。


STEP①
全社員&全芸人に『シルクハット』の存在を周知させてください。
システムの説明から入るのではなく、必ず「西野がクラウドファンディングで2億5000万円の資金を調達している」と“数字”で興味をひいてから、その後、システムの説明をしてください。

STEP②
毎日どこかでおこなっている若手芸人の単独ライブの売り上げを「2倍」にしてください。

単独ライブの売り上げを「2倍」にする方法をお伝えします。

単独ライブでの「取りこぼし」はグッズです。
在庫リスクのことを考えて、確実に売り切れる量しか用意していないので、本来、入るハズだった利益が入っていません。
この原因は、「各グッズ販売個数の見込みが事前にとれていないこと」にあります。

そこで、若手が単独ライブを開催する都度、『○月○日の単独ライブを盛り上げたい』というクラウドファンディングを立ち上げて、そのクラウドファンディングのリターンで『グッズ』を出してください。
単独ライブの予約販売サイトとして『SILKHAT』を利用してください。

運営側は事前に需要を確認できるので、在庫リスクを無くすことができますし、お客さんも、事前にグッズを選べることができます。
グッズを「当日手渡し」にすれば、送料をカットすることができる上に、お客さんが単独ライブに行く理由か一つ増えます。

地方の方に向けて『送料込み』のグッズも出してください。
そうすることで、単独ライブに参加できないお客さんからも単独ライブの売り上げを作ることができます。

物理的ライブに参加できない人も単独ライブのターゲットに入れてください。

STEP③
クラウドファンディングは芸人にやらせて、グッズの開発・準備も芸人にやらせて、在庫リスクも芸人に持たせてください。
ファンが求めているモノを知っているのは、社員ではなく、ファンから一番近い距離にいる『芸人』です。

「『シルクハット』上で売れたグッズの利益は全て芸人に入れる」とすれば、芸人は在庫リスクを自分で抱えることを納得します。
吉本興業が『シルクハット』上で徴収するのは、あくまで、『シルクハットの手数料』だけにしてください。

「グッズを売れば売るほど自分の利益が増える」ということは芸人は懸命にグッズの告知をします。
社員がする告知の数万倍の宣伝力です。
大切なのは、販売員の宣伝力とモチベーションです。
今は、宣伝力とモチベーションの無い社員が、グッズを販売してしまっています。地獄です。

「芸人のグッズ開発&販売」は吉本興業で何十年も続いた文化なので、この権利を芸人に明け渡すのは億劫かもしれませんが、潔く明け渡して、プラットフォームの手数料だけ頂いた方が吉本興業に入るお金は格段に増えます。
一度、シミュレーションしてみてください。


以上のSTEP①②③を、そのままやったら余裕で勝てるので、やってみてください。
シャンプーハットてつじサンの『シルクハット』の使い方が参考になると思います。


くれぐれも余計なアレンジは加えないでください。
受け止めたくないかもしれませんが、(いずれ逆転しますが)少なくとも今この分野では、数百人の吉本社員の集合知よりも、僕の経験値の方が勝っています。
とてもお世話になった会社なので、メチャクチャ応援しています。



キングコング西野亮廣


【追伸】
このことが一人でも多くの方に届くよう、この記事をシェアしていただけると嬉しいです。
皆が前向きに動くといいな。





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毎日、議論&実験&作品制作&Webサービスの開発&美術館建設を進めています。
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今朝は『経営者必見!ヒアリングのデメリット』というテーマで書かせていただきました。
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