~このお話はフィクションです~
「木に登る黒猫」
私は、黒猫です。
生まれた時から真っ黒の黒猫です。
母も真っ黒の黒猫でした。
兄弟は、キジだったり、ミケだったり…
私は、人間から「黒猫!縁起が悪い!」「嫌だ!黒猫に睨まれた!」「黒猫は魔女の使いよね!」等と根拠の無い事で忌み嫌われた事も多々ありました。
それでも、私は5歳のこの歳まで、生き延びて来ました。
毎年、可愛い子猫を産みましたが、大きく育ってひとり立ちするまでに、殆どの子が人間に攫われたり、からすに突付かれたり、迷子になって行方が知れなくなったり、車に跳ねられたりして、運良く生き残れるのは、1匹か、2匹でした。
今年も、また私は4匹の子猫を産みました。
この歳になると、子育ては体に堪えますが、何としても育てなければなりません。
私は、安全な場所へ子猫を移動させながら、毎日食べ物を探し歩きました。
移動の都度、1匹 また1匹と、私の子猫たちは動かなくり…冷たくなって行きました。
私は、最後に残った、真っ黒の子猫を咥えて、1軒の家の小さい物置の下にたどり着きました。
暫く様子を見ていると、その家人間が出てきました。
そして…
「あっ!そこに居たの?数日前から猫がいるな~と思って居たのよ。あなた、子育て中ね?子猫の声が聞こえたから…」
そう言うと、家の中からドライフードを持って来て、物置の下に入れてくれました。
私は、充分注意していた筈でしたが、あまりの空腹に一気に平らげてしまいました。
食べ終えてから、小さいとき、人間がくれた食べ物を食べた兄弟が、泡を吹いて動かなくなってしまった事が脳裏をよぎったのですが、あまりの美味しさに、死んでもいいと思うほど、私は飢えていました。
でも…どうやら、この人間は食べ物に毒は入れていなかったようでした。
それから、毎日その人間は、私達に食べ物を置いてくれました。
ところが、やはり人間は信用してはいけなかったのです。
ある日、私達が出入りしている穴の前に、いつもとは比べ物にならない程の良い匂いの食べ物がおかれました。
私も子供も、その匂いに釣られ、その食べ物に口をつけた途端
ガシャン!
檻の入り口が降りてしまい、私たちは捕まりました。
私も子供達も恐怖のあまり、身体が動かず、
布をかけられていたので 外の様子は分かりませんでしたが、どこかへ運ばれたようです。
そして、布がめくられ、何かを刺された途端、私の意識は薄れていき…ああ、私は殺されてしまうんだなと思いました。薄れる意識の中で、子供の顔が浮かんでは消えて…やがて真っ暗になました。
ところが、私は生きていました。
目覚めると、暖かい室内で、暫く目を凝らしていると、人間が良い匂いの食事を運んで来てくれました。その後、
数日して、何故か、私は元の場所へ放されました。
私は必死で逃げました。
走って走って…
人間が、私に向かって何か言っていましたが、私にはもう人間の話を聞くつもりも余裕もありませんでした。
あの日以降、私は2度と子猫を産む事も、子供に会う事も有りませんでした。
自分が生きる事だけを考えて、毎日を過ごしていました。
ある日、私は、
大きな物置がある、庭の広い人間の家の
塀の上を歩いて、食べるものを探していました。
「わぁ~可愛いね。大切な家族だもんね」
「これ美味しい?寒くない?」
人間の声が聞こえて来ました。
今までの私だったら、人間の声が聞こえようものなら、一目散に逃げ出していましたが、その日に限って、なにやら好奇心が沸いて来ました。
そっと、声がする窓の近くの木に登り、背伸びをして、窓の中を覗き込みました。
部屋の中は、日差しがたっぷり差し込み、暖かそうなジュータンに、キャットタワー、ベッドがおいてありました。
ベッドの傍らには、綺麗な水と、カリカリが沢山入って置かれていました。
そして、人間の女性がソファーの上で、若い黒猫を膝に乗せ、喉の辺りを撫でていました。
若い黒猫は、気持良さそうに上を向き、ゴロゴロと喉を鳴らしていました。
暫く、その様子を見て居ましたが、人間に気付かれると、また追い払われるので、そっと木を降りて、食べ物探しを続けました。
夜になり、寒さが厳しくなって来ました。
私は、暖が取れる場所を探し、小さな物置の下へ潜り込みました。
決して、暖かくは無いのですが、寒さはある程度防げます。
そして、何より安全でした。
やがて、私は眠りに付きました。
翌日、私は、どうしてもあの幸せそうな若い黒猫の顔が気になり、もう一度見たくなり、また
大きな物置がある、庭の広い人間の家へ行きました。
窓の近くの木に登り、中を覗くと…
あの人間の女性が、若い黒猫と、おもちゃで遊んでいました。
「ほら!これ届く?」
「わ~、熊太、凄いね!」
若い猫は、人間が振り回している羽の付いたおもちゃに飛びついて遊んでいました。
一通り遊ぶと、「熊太、おやつにしようか?」と立ち上がりました。
その拍子に、窓から部屋を覗き込んでいた私の目と、女性の目が合いました。
ハッ!
私は追い払われると思い、逃げる足場を確認しました。
すると、その女性は「逃げないで。あなたもおやつ食べる?」と声をかけながら、そっと窓を開けました。
私は、驚いて、転がり落ちるように木を降りると、必死に走りました。
背後では、「逃げないで 逃げないで」とあの女性の声が聞こえていました。
しかし、私は庭を抜け、塀をよじ登り、走れるだけ走り、昨日の塒の小さな物置の下に滑り込みました。
荒い息が整うまで、私は緊張の糸を緩める事はありませんでした。
その夜、私は夢を見ました。
最後に産んだ私の子供。真っ黒で金色の目が愛らしい、尻尾の曲がった子猫。
その子は、私が捕まった同じ日に、同じ人間に捕まり、それ以降会うことはなかった。
しかし、その最後の我が子が、私の夢の中で嬉しそうな笑顔で走りまわっています。
ああ、良かった。生きていたんだ。あんなに元気で…坊や…と私が近づこうとすると…
坊やを抱き上げる人間の手が近づいて来ました。
私は必死に叫びました。
「坊や、人間に気をつけて!坊や!逃げて!坊や!殺されてしまう!」
そして…、私は自分の叫び声で、目が覚めました。
もうとうに忘れたと思っていた心の傷が、ズキンと痛みました。
「坊やは、人間に殺されてしまった…。きっとそう。人間は残忍だ」
しかし、私にはどうする事も出来ませんでした。
私の坊やも生きていれば、あの室内にいた黒猫と同じくらいになっていただろう…
あの子と同じような…
…そう言えば…。
あの若い黒猫の目も金色だった。
あの若い黒猫の尻尾も曲がっていた…。
あの若い黒猫の…
私は、居てもたっても居られず、心臓の鼓動が激しくなる中、またあの大きな物置がある、庭の広い人間の家へ向かいました。
流行る気持のせいか足が震えたが、何とか木に登り、窓から中を覗き込みました。
そこには、あの若い黒猫が、気持良さそうにベッドで寝ていました。
よく目を凝らして見ると…あの最後に別れた時の我が子の面影が重なり…
「あああ!間違いない!私の坊や!私の最後の子猫!
真っ黒で金色の目が愛らしい、尻尾の曲がった子猫!生きていたんだ!」
私は、思わず「坊や!」と叫びました。
しかしそこへ、人間の女性が部屋に入って来ました。
私は、もう一度叫びそうだった声をぐっと飲み込み、暫く我が子を見つめていました。
「生きていた!生きていたんだ!坊や!」
すると、また女性は私に気が付きました。
今度は、窓を開けずに、玄関から出てくると
木の上の私を見上げながら
「逃げないで。大丈夫よ。誰もあなたを虐めないから」
人間は嘘をつく。今まで私の兄弟は、黒猫というだけで、野良猫というだけで、石を投げられたり、水をかけられたりした。
どんどん冷たくなる兄弟の体の横で、私は、人間の残忍さに震えていた。
私が産んだ子供達も、住む場所を追われ、カラスに殺されたり、人間に殺された。
最後に産んだ子猫も、あの真っ黒の坊やだけが生き残っていた。
その坊やも、私が捕まった時に、連れ去られていた。
女性は、私を見上げながら、「あなたうちの熊太に似ているね。もし良かったら、御飯食べてね」
そういうと、庇のある縁側に御飯を置いて家の中へ入った。
私は、御飯には手をつけず、木を降りて、その家の大きな物置の下に潜り込んだ。
暫くは、此処を寝床にしようと決めた。
翌日も、その翌日も、私は木に登り、我が子の姿を眺めて過ごした。
その家の縁側には、小さな箱が置かれた。
中には、暖かそうな毛布が沢山入っていた。
そして、毎日美味しそうな御飯も置かれた。
女性は「あなたの物よ。寒いでしょう?ハウスに入って寝てね」と私に言った。
数週間が過ぎた頃、私は体調を崩した。
風邪をひいたようで、咳が出る。足もふら付く。
それでも、私は我が子を見るために木に登った。
その日、その女性は、私の姿を見つけると、、私から良く見えるように若い黒猫を抱き上げて窓の近くへ連れて来た。
「坊や!私の坊や!」
私の声は、ガラスに阻まれ届いていないようだったが、若い黒猫は不思議そうな顔で私を見つめていた。
張り詰めた空気があたりに漂い…暫くすると、若い黒猫は目を見開き、「ニャー」と鳴いた。
「お母さん!?」
「坊や!私の可愛い坊や!」
「お母さん!?僕のお母さん!」
あまりの鳴きっぷりに、女性は戸惑っていたようだが、熊太を抱いて縁側のある下の部屋へ降りて来た。
私は、迷わず縁側に飛び乗った。
網戸越しに、坊やと再会を果たした。
坊やの臭い、毛の柔らかさ、愛らしい声。
私の坊やは、網戸に体をこすり付けて私に甘えた。
それを見ていた女性は、
「あなた、熊太のお母さんなのかな?そういえば似ているよね。うん!これからは毎日此処で一緒に会ってね。熊太のお部屋はこっちに移すから、いつでも会いに来てね」と言った。
そして、「あなたのお部屋を縁側に用意してあるの。前から置いているけど、一度も使ってくれないよね。安心して、入って。中は暖かいのよ。御飯も安心して食べてね。環境に慣れたら、時期を見て室内で一緒にうちで暮らしましょう」と付け加えた。
そして、部屋から出て行った。
私は坊やから、沢山の話を聞いた。
捕まった日、坊やは、人間に保護され、この家にやってきた事。
時折せき込む私を心配して、坊やは幾度も話を中断して「お母さん、大丈夫?」と聞いて来た。
私は、もう6歳になる。私の母親は3歳で死んだ。
私も、そう長くは無い事は分かってたので、坊やとの時間を1分でも長く感じて居たかった。
そして、坊やは続けて話してくれた。
ここの女性は、人間だけど優しくて安心な事。
毛布の暖かさ、ご飯の美味しさ。おもちゃの遊び方。
人間の優しさ…
私は、信じられない気持と、何か暖かい気持で、我が子の話を聞いた。
その夜、初めて女性が用意してくれた御飯を食べた。
「美味しい!」生まれて初めて、私の為に用意された御飯。安全で安心な食べ物。
夢中で食べた。お腹がいっぱいになるまで食べた。
そして…私の為に用意された箱の部屋に入った。
ふわっとして乾いた毛布は、私の体を包みこみ、暖かくて心地良かった。
寒さも恐怖も無く、ただただ暖かかった。
私は、眠った。初めて安心と暖かさの中で眠った…
遠い昔、私が捕まった日、翌日元の場所で開放された日、人間が逃げる私に言ったような…「あなたの子供は、必ず幸せな生活が出来るようにするからね。約束します!だから、安心してね…」
人間の中にも、暖かさがあるのね…。息子を救ってくれてありがとう…。
私は、生まれて初めて人間に感謝した。
朝が来た。
女性が母猫の為に暖めた、湯気の立つ御飯を手に玄関から出てきた。
縁側の箱のお部屋の中には、黒い背中が見えた。
女性は「入って寝てくれたんだね~。良かった。さぁ、暖かい御飯よ。食べてくれるかな?」そう言いながら、箱のお部屋に近づいた。
ガシャン!
割れた皿のかけら混じり、暖めた御飯が湯気を立てている。
「お母さん猫さん?」
女性は、思わず、手を入れた。
触れたのは、すでに冷たくなった黒猫の背中だった。
「ああ…何で?どうして?熊太のお母さんなんでしょ?やっとうちにいつ居てくれたと思ったのに…」
網戸の前では、熊太が悲しそうな声で鳴いていた
「ニャー」
「お母さん!お母さん!」
女性は、黒猫の体を丁寧に箱に入れ、沢山の花と御飯を入れて、熊太の前に置いた。
「ニャー」
「お母さん!お母さん!」
黒猫の体はもう動く事は無かった。
しかし、黒猫の顔は穏やかで、どこか安心したような表情だった。
「母猫さん、熊太は絶対に幸せにするからね。あなたの分も家族として大切にするからね。約束します」
女性は、そういうと、いつも母猫が登っていた、庭の木の下に箱を埋葬した。
いつでも熊太に会えるように。
終わり
猫達は様々な毛の色をしていますが、他の色の猫とも共生していますよね。
種類や色で差別をしない!
人間も見習いたいですね。
日々、保健所や愛護センターに持ち込まれる命
殺処分なんて、恐ろしい言葉が世の中からなくなりますように!
署名しました!↓
「ねこけんフェイスブックのお友達大募集中」です!
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https://www.facebook.com/npo.nekoken
ねこけん里親会
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日時 2014年2月2日(日)
午後1時~午後5時
場所 東京都板橋区志村1-32-25
交通 都営三田線 志村坂上駅下車 徒歩約5分
スーパーサントクの前( コインパーキングあり)
家族を待っている猫さん達が沢山参加します♪
保護猫の体調により、当日欠席となる子もおりますが、当日のお問い合わせはご遠慮頂けます様お願い申し上げます。
※仔猫も参加致しますが、離乳前・8週齢前の仔猫達は譲渡致しません。
里親会に出られるようになった仔猫のみ、譲渡対象となりますので、予約や事前面会は出来ませんので、ご理解ご協力をお願い申しあげます。
☆里親様へのお願い☆
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上記より、条件・契約書をご確認ください。
①終生飼育 ②完全室内飼養 ③不妊・去勢手術 ④医療費の負担 などの条件や、里親さんになっていただく手順などを記載しています。