クッキーにおける卵の役割&卵黄・全卵・卵白それぞれで作った場合の比較 | 型にはまったお菓子なお茶の時間

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主に日々のお茶のお供を記録しているブログです。
レシピの配合はあくまでも「個人的な作りやすさ」と「私好みの味に合わせたもの」になっていますので、レシピそのものよりも、作業する際の理由やポイント自体がお役に立てましたら嬉しく思います!

今では動物性の材料を使わないマクロビレシピなども多いですが、クッキーの基本の材料は、粉・砂糖・バター、場合によって卵。
クッキーには卵が入ることによってどうなるのか、その卵も卵黄・卵白・全卵を使った場合のそれぞれの違いなどについてご質問いただきましたので、解説をちょこっと(のつもりが例によって長文)。
卵については、こちらも合わせてどうぞ。

●卵の役割 《起泡性・気泡の安定性・乳化作用・殻の色・選び方・メレンゲについて》
 http://ameblo.jp/lovable-kitchen/entry-11889943914.html

●その他の材料について、または工程の意味
 砂糖 ~甘さと食感を左右する~
 小麦粉について ~ふるう・こす・休ませる・さっくりと混ぜる・お菓子に薄力粉を使う理由~
 オーブン使いこなし
 バターなど固形油脂の性質・お菓子作りに無塩バターを使う理由
 生クリーム《ラベルの表記・動物性と植物性の違い・脂肪分別用途・選び方》


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《クッキー生地に卵を加える理由・その効果》
 クッキーに卵を加えるのは、風味を出すためだけではなく、固さの調整や生地のつなぎのためと言う理由もあります。

 粉や砂糖はどんなに混ぜても、当たり前ながら水分がある程度ないとまとまりませんよね。
 例えばバターと砂糖を練ったあとに、卵をよく混ぜてから粉を加えるレシピ。
 バターと粉の間に乳化作用がある卵を加えることによって、バターと粉がよく混ざりますし、その水分でまとまりやすくなっています。
 卵が持つ乳化作用や起泡性、熱凝固する性質などによって焼いたあとのサクサクとした食感も生まれるため、つなげるための水分と言っても、水や牛乳などで代用してしまうとグルテンが出てサクサク感が出ずに固いものができあがります。

 ショートブレッドなどバターの油脂分で粉類をまとめるクッキーもありますが、その場合は材料比率を計算してみると、大抵バターの割合が卵が入らない分多めになっていると思います。

 そして配合率にもよりますが、ある程度卵が入っているクッキーは、卵の熱凝固作用によって、バターだけのものよりも底が広がりにくく形を保ったまま焼くことができます。
 だから型抜きクッキーなどには卵が配合されているレシピが多いんです。


《全卵・卵黄・卵白のどれを加えるか》
 卵を加えると言っても、レシピによって全卵を使うもの、卵黄だけ加えるもの、卵白だけ…と色々ありますよね。
 基本的なクッキー生地の配合で、卵の部分を同じ重さの卵黄・卵白・全卵を使ってそれぞれ焼いた場合を比較してみました。(←この説明で意味通じてますでしょうか?)

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●卵黄
 卵黄は脂質を含んで泡立たないため、卵白を含む場合よりも嵩が出ず膨らみにくい傾向があります。
 膨らみにくいのが悪いわけではなく、そのまま焼き固まってくれるため、形を崩したくない型抜きクッキーに配合されることもあります。
 そして脂質のおかげでコクや風味が増します。
 食感は、3つの中では一番もろく口溶けが良い感じ。

●全卵
 先日は卵白が泡立つ起泡性のお話を載せましたが、卵白には膨張する性質があるため、卵白や全卵を使用するクッキーは生地は卵黄のみの生地に比べてやや嵩が出ます。
 特に全卵には卵黄も含まれるため食感と風味もプラスされ、起泡性がある卵白の性質と相まってややカリっと歯応えある食感になります

●卵白
 卵白のみを加えた場合、全卵の部分でも説明したようにやや膨張します。
 ただ卵白は他の2つと比べて水分とたんぱく質が多く含まれます。
 水分が多いことで焼き時間が長く必要になるのですが、その加熱時間が長くなることでたんぱく質に熱が通り過ぎてしまい仕上がりが固くなります。
 (例えばたんぱく質が多い鶏肉に、火を通しすぎると固くなりますよね、その性質)

 だから、卵白を使ったクッキーの代表であるチュイールやラングドシャなどは、焼くのに時間がかかると固くなるため、どちらも薄く焼かれているのです。
 そして当たり前ですがちゃんと配合も考えられていて、軽い食感ながらも「たんぱく質が熱で固まる性質」のおかげで薄くても持てる固さがあります。
 もし卵白ではなく同じ重さの全卵や卵黄を使って作った場合は、薄く焼くと卵白で使る場合と比べて崩れやすくなります。

 かと言って、卵白を使うと普通の厚みの食感が軽いクッキーが焼けないのかと言うとそういうことではありません。
 あくまでも卵黄・全卵・卵白どれを使った場合も同じ配合で焼いた場合の比較ですので、当然配合によってサクっとしたものを作ることもできます。

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 料理やケーキ作りでもそうですが、卵白や全卵を生地に加えると、分離しやすいので卵白のコシを切りつつ手早くたくさんしっかりと混ぜねばなりません。
 そういった点では、作りやすいのはどれかと言うと乳化しやすい卵黄のみを加えるレシピだと思います。


《おまけ・サクサクさせるためのポイントはどれが本当か》

“バターを多目に加えるとサクサクする”
“砂糖を多く加えるとサクサクする”
“ショートニングを加えるとサクサクする”
“アーモンドパウダーを加えるとサクサクする”
“卵を加えるとサクサクする” ……

 クッキーの食感をよくするためのポイントとして、色々なことが言われています。
 上に挙げたものどれも間違いではありませんし、それ以外にもポイントとして言われているものはまだまだあります。
 でもそれらも、どのレシピでも必ずそうしたからサクサクするというわけではなく、やはり配合や作り方です。
 さらに同じ材料でも、室温や材料の状態、混ぜる順番や、混ぜ方で出来上がりは変わります。
 だからポイントとして間違いではなくとも、それぞれに適した環境・配合の場合でしかその効果が発揮されないので、上のポイントに沿っていてもサクサクしていない場合や、沿っていなくてもサクサクしているレシピが存在するのです。
 今回は卵についての記事なので、クッキーをサクサクさせるポイントは、詳しくはまた別の機会に述べてみたいと思います。


 さていただきましたご質問の回答になっていますでしょうか?
 長文読んでいただき、ありがとうございます!
 もっとコンパクトに文章をまとめられるようになりたいものです…