精神症状と株価暴落が連動している人 | kyupinの日記 気が向けば更新

精神症状と株価暴落が連動している人

これは精神科医で、なおかつ株をしているか、日経新聞をとっている人でないとなかなかわからないと思う。

ごく一般的に言うと、精神科病棟で症状悪化する人たちが極端に増加すると、しばしば株式市場ないし債券市場の暴落が生じる。だから、かつて病棟が荒れてくると、

そろそろ何かありそうだ・・

と思ったものであった(今でももちろん思うが)。株式マーケットと統合失調症の人たちの精神症状の連動性については、精神科医になって3年目に気付いた。

僕は中学2年の頃から毎日2時間は日経新聞を読んでいた。日経新聞は好きだったし興味があったのである。だから母親などは僕は経済学部に行くとずっと思っていたらしい(←理系、文系のことが基本的にわかっていない。まあ経済学部は理系的ではあるけどね)。

僕はどこの病院でも、素晴らしく株価の暴落に連動している人を発見したが、今の病院では極めて精度が高い人は2名ほどだった(マーケットと連動性が高いと言う意味)。実は偶然だが、その2名はともに過去ログに挙がっている。

1名は、「多剤併用についての話」の最後のパラグラフで出てくる。この人はかつてはほぼ間違いなかった。まさしく100発100中クラスである。今は精神症状が寛解したため、もはやそういう連動性は見えない。しかし、稀に一時的に妄想が出現した時は間違いなく暴落が起こる。

過去ログでは、彼にデパケンRを使ったことで病状がかなり改善したと記載している。実は、この株式市場の連動性を考慮し、気分安定化薬の治療可能性に気付いたのである。

もう1名は「24年ぶりの退院」に出てきた女性である。彼女は今も無事外来通院を続けている。僕が想像した以上に経過が良かった。彼女も、もはや精神症状との連動性は見られない。余談だが、彼女は24年も入院していたのにすごく料理が上手であることが判明。他の人たちが全員それを証言している。こういう奇跡的な良くなり方も非定型色彩(つまり双極性障害的という意味)なんだと思う。

ところで、患者さんの精神症状が悪化し始めて、自分が持ち株を売ったことはほとんどない。というのは、僕は何年という単位で株を持っていないこともあるし、持っていても取引は自分で決めて行うからだ。だいたい、自分で売買を決めないと面白くないでしょ。(信用取引はせず現物だけというのもある。だいたいマーケットなどいちいち見ていられないって。今は日経新聞さえ購読していない)。

こりゃ間違いなく暴落だろうと思っていると、本当にそうなるので、

なるほどね、と思う。(←まさにアホ)

しかし、このメカニズムを注意して眺めていると、色々なことに気付く。

ある人は、朝起きてすぐに株を売る。

これはその会社の近い将来を悲観しているからに他ならない。言い換えると、近い将来に漠然とした不安を覚えるからである。

その群集心理、その悲観の集合体みたいなものが「暴落」と言う経済行為なのだろう。その意味では、暴落は、ある種の規律のある正常な経済現象と言える。

患者さんが一斉に悪くなり病棟が荒れだすと言う意味だが、同じような心理変化が世界中の投資家の心理にも生じているのだろうと思う。だから買う人より売る人が急激に増加するのである。なぜ株を売るかと言えば、持っているより売って現金化する方が不安が減少するからに他ならない。

そう考えると、彼らの心は世界の人々の鏡であることがわかる。

彼らは全く株も持っていないし新聞もろくに読んでいないのに、これは不思議なことだと思うよ。

株式市場は、資本主義の実体を数字で端的に表現したものであり、その変動はやがて実体経済に影響する。暴落が始まると、やがて不景気や恐慌が訪れるのである。

この影響の順序、つまりニワトリと卵でいえば、どちらがよりそれに近いのかは少しわかりにくい。つまり株式市場が暴落したから経済が悪くなるのか、あるいは、経済がアンダーグラウンドに徐々に悪くなって来た為に、株式市場が暴落を来たすかである。

ずっと以前、あるニュース系の番組で、あるコメンテイターが「株が暴落しても誰も困ってないですし・・」と話していたが、これはあまりにも頭が悪すぎるコメントと言えた。

結局、暴落が生じると、株を持たない無資産に近い人たちが最も経済的に困窮するのである。これはたった今の日本もそうなっている。だから、株式市場はバブルは困るが、下がるよりは上がる方が良い。これは歴史的にもそうなっているので、彼の言葉は僕には謎過ぎるコメントに思われた。

株式マーケットにかかわるアナリスト、特にファンダメンタリストはしばしば、予測を見誤る。これは年末の株価予想が、プロ野球の優勝チーム当て以上に難しいことでもわかる。

ファンダメンタリストは未来を見誤りやすい(重要)。

結局、群集心理の自然に生じる波、それは季節的なものもあるし、一見、理屈に合わないものもある。その波の中には避けられないもの、つまりある種の必然があるような気がする。ファンダメンタリストが未来を予測できないことが多いのは、人の心理の動きが経済事象の比較的大きな部分を占めているからかもしれない。

万一だが、全世界の人の40%の人が双極性障害(それも軽いもの)だったとしたら、経済の動き、つまり株式マーケットの動きはかえって規則的になるような気がする。(その前に、経済自体が成り立たないと思うが)

そうなった場合、僕には経済の動きのカオスの部分が軽減されるような感覚があるからだ。

経済自体は徐々に発展するものだと思う。これは過去の50~60年単位の動きを見れば明らかであろう。

核戦争とか、彗星が地球に衝突するとか、とりわけ地球環境が激変することが生じない限り、マーケットは上がったり下がったりしながら少しずつ上昇するのである。

その波動は、一般の感覚に比べあまりにもダイナミックであり、それに比べれば、人生は短すぎるだけなんだと思う。

参考
深刻な不景気とdepression