ソーフ岩のジンベイザメ | 伊豆スケ・ブログ

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  1989年だからもうかれこれ24年も昔のことになる。

  バブル末期の当時私は横浜に親と住んでおり、東京の会社で働いていて、忙しい日々を送っていた。

  そんなある日、行きつけのダイビングショップの陽気な店長が私にこう言ったのだ。

  「Takuさん、ソーフ行きませんか、ソーフ!」

  「ソーフ?」

  

  聞くところによると、そのソーフというところは、東京から約650キロ南方、八丈島と小笠原の中間に位置する絶海の孤島、というより海面から100mも突き出た切り立った岩で、回遊魚はおろかサメが出るか鯨が出るかわからない究極のダイビングスポットだという。


  折しも私のタンク使用本数はあと数本で100本に達しようとしていた。

  そんな定期航路もないような海で記念すべき100本を迎えるのも悪くない。

  二つ返事でソーフ岩クルーズに参加を決めた。

  


孀婦岩(そうふいわ)

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AD%80%E5%A9%A6%E5%B2%A9


  ソーフ岩ダイビングツアーは大きなクルーザーを貸し切って千葉の港から乗船し、八丈島から鳥島、スミス島、ベヨネーズ列岩といった無人島周りを点々と潜りながら孀婦岩まで到達するという、およそ1週間船の上に乗りっぱなしの冒険クルーズだった。



  伊豆諸島や沖縄の離島は経験していたとは言え、今考えるとよくぞまあそんなすごいダイビングについて行ったものだなと思う。

  幸い、天候にも恵まれ、海も穏やかで船酔いなどに悩まされることもなく航海は進んだ。


  ツアーに参加したインストラクターを含む男女6名はほぼ一日中舳先で進行方向の青い海を見つめ、日光浴をしたりトビウオが滑空するのを指さしたり、島影にときめいたりして過ごした。

  一度などは、海面で昼寝をしている2メートルほどのサメの脇を通り過ぎて行ったこともあった。



  八丈島を過ぎ、鳥島やスミス岩に到達すると、島周りで潜った。

  まったく人の入った形跡のない海は、大味ではあったが潮通しもよく、イスズミの群れやクロマグロ、時にはメジロザメも現れた。

  そんな海に午前1本、午後2本潜り、夜は釣りをしたりビールを飲みながら昼間見た魚の話で盛り上がった。


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  クルージングを始めてから3日目、ようやくソーフ岩が見えてきた。

  徐々に大きく見えてくる海に針のように突き出た岩はやはり異様で、特別な場所を思わせた。


  岩のそばに船を停め、いざダイビングの準備をしていると、なんと船べりに4、5mほどのジンベイザメが現れた。

  海面に、ぷは、というように口を開けて出現したものだから船上は大声を出すもの、口笛を吹いて歓喜するもの、大パニックになった。

  それはまるでジンベイザメが我々に挨拶に訪れたような印象だった。


  興奮冷めやらぬまま、ソーフ岩で1本目。

  潜行を開始してまもなく、果たしてジンベイザメが近づいて来た。

  水中ではさらに大きく、神々しく、ゆったりとした動き。

  恐怖は感じなかったが、畏敬の念は禁じえず、むやみに写真を撮るために近づいていくことはためらわれた。

  
  ジンベイザメは我々のやや下をすり抜けて行った。

  その途端、皆がジンベイザメを追いかけ、あるものは目に焼き付けあるものは水中カメラのシャッターを押した。


  私がその時持っていたニコノスⅤで撮った一枚がこの写真だ。

  今はポジもどこかにしまったままだが、たまたまプリントしたものがログブックと一緒にあったので、スキャンし色調を整えてみた。


  追いすがるダイバーと吐き出す尋常ではない量のエアーがその時の興奮を表している。

  私の記念すべきタンク100本目ダイブだった。


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  1989年8月12日   

  カメラ ニコン ニコノスⅤ 

  レンズ Sea&Sea 20mmf3.5

  f5.6 絞り優先オート

  フィルム EPP(エクタクローム100プラス)

  自然光

  孀婦岩