2017年9月17日:パート2

 

 安倍総理が本当に「臨時国会冒頭の解散」を決断したとすれば、その理由は総理自身の言葉で語っていただくしかない。選挙に勝つためには、国民に納得してもらうための「大義名分」が必要だ。

 小泉元総理の郵政解散時の演説ではないが、安倍総理が会見で何を言うかは死活的に重要だ。衆議院選挙の趨勢を大きく左右することになる。

 それはそうとしても、解散の時期に関して党内から次のような見方が出て来るのは自然な流れだろう。

 「国会が始まれば、森友問題や加計学園問題等が再燃する。閣僚のスキャンダルも厳しく追及されるだろう。内閣支持率が再び下がる可能性が高い。先に行けば行くほど、政権は窮地に立たされるかもしれない。」

 「それなら、今、野党の選挙体制も新党結成の準備も整っていないうちに選挙に打って出たほうがいい!3分の2を維持することが難しかったとしても、議席減を抑えられる。そうじゃないと、解散のタイミングを完全に失う!」

 「最大野党の民進党は醜聞による主要人事の躓きや離党ドミノでガタガタしている。小池東京都知事の後押しを受けた新党結成も十分に進んでいない。幸い、内閣支持率も回復している。解散するなら今のタイミングしかない!何しろあと10日しかないのだ。新党は候補者を擁立する時間もない!」

 何人かのマスコミ人、政治関係者とも電話で話した。こんな分析をするひともいた。

 「今、衆院選挙をやれば、最大の争点は北朝鮮問題になる。大多数の有権者は、この危機を乗り切るために安倍総理の手腕が必要だと感じているに違いない。疑惑がどうのこうのなんて吹き飛んでしまうよ!」と。

 なるほど、そういう側面はあるのかもしれない。が、自分が最も心配するのは、「内閣改造直後の臨時国会をやらずに解散総選挙をやる」ことを一般の国民がどう受け止めるかということだ。

 ちゃんとした説明がないまま選挙をやったら、それこそ「国民をバカにしている!」と思われてしまうだろう。この事態だけは、絶対に避けねばならない。

 確かにここまで「電光石火」だと、野党の選挙準備は全く間に合わないように見える。新党を完全に立ち上げることも、最大野党の民主党が300小選挙区に公認候補を擁立することも、野党共闘のメカニズムを作るのも難しいだろう。

 が、何度も警告したように、万一、無党派層を中心とした「怒り」という名の受け皿が出現したら、それこそ都議選の二の舞になる可能性がある。特に都市部(東京、埼玉、大阪、愛知等)は要注意だ。

 少し前のブログにも書いた。国民の目には「安倍総理が国会での疑惑追及を逃れるために解散する」みたいに映る。「選挙に勝つためには何でもやるのか」という批判も起こるだろう。

 これに対しては、総理ご自身の言葉で、「そういう意図でやるのではない。00の理由でやるのだ」と説明してもらうしかない。いわゆる大義名分を日本国民に十分、理解してもらうための最大限の努力が不可欠だ。

 改造直後の総理会見等で疑惑を持たれたことを国民に謝罪し、「その都度、真摯に説明責任を果たしていく」「政権奪還時の原点に戻って仕事師内閣で実績を上げていく」と明言した総理の言葉との整合性も問われる。「北朝鮮問題が緊迫しているなら、なぜ、こんな時に選挙をやるのか」という批判も起こるだろう。

 こうした国民の普通の感覚をけっして侮ってはならない。自民党は有権者が「普通に抱く疑問」を真摯に受け止め、丁寧かつ明確なメッセージを国民に届けなくてはならない。それをやらないと、思わぬ「爆弾低気圧」に見舞われ、予想以上の議席を失う羽目になる。

 安倍総理の解散記者会見(?)に注目したい。総理が解散を決断すれば「掲げられた大義名分」を踏まえて一致結束する。力を合わせて選挙を戦う。1人でも多くの仲間が戻って来れるように!!

追伸:今回の衆院選挙は朴槿恵大統領を支える与党セヌリ党が予想外の惨敗を喫した2016年4月の韓国国会議員選挙をどこか彷彿とさせる。振り返ってみると、あれが朴槿恵政権凋落のプレリュードになった。

 政府の経済政策に対する国民の不満は強かったものの、最大野党の「共に民主党」が主導権争いの末、分裂した。野党間の共闘もスムーズに進まなかった。その結果、かなり多くの選挙区で野党の候補者同士が争う構図が生まれた。

 誰もが「野党分裂は与党を利する」と思った。事実、韓国メディアの世論調査でも「与党セヌリ党が過半数を大きく上回る」と予測されていた。

 ところが、蓋を開けてビックリ。選挙は与党の敗北に終わった。セヌリ党は過半数を大きく割り込み、第1党の座さえ失ったのだ。様々な分析がなされているが、主な要因は「与党内の内紛劇によって、国民のセヌリ党に対するイメージが悪くなった」ということだ。

 自民党は、何があろうと昨年4月の韓国国会議員選挙の轍を踏んではならない!