2019年12月22日(日)日本橋亭【極付演芸大忠臣蔵】 貞山の岡野金右衛門 | 有限会社宮岡博英事務所のブログ

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貞山先生から電話を貰いました。

「大忠臣蔵のチラシねえ。俺の岡野は大工の娘から絵図面を盗らないのよ」

 

えっ!ほとんどの『岡野金右衛門』は赤穂浪士の岡野が酒屋の手代に化けて江戸に潜伏中、

酒屋の常連客の娘の父親が吉良邸を普請した大工であることを知り、娘との恋愛を演出して

吉良邸の絵図面を父親の手元から盗み出させるという物語です。

 

貞山型は、岡野が酒屋の手代に化けているのはそのままですが、酒を買いに来るのは

吉良邸に奉公しているお艶という娘。この娘から吉良邸の間取りを聞いて絵図面を作り出すという筋。

もちろん、恋愛傾向はあります。

この父が山田五次右衛門と言って、元はお六尺(陸尺)という役回り(将軍様の駕籠を担ぐ仕事)故に

苗字も許され武士格だったそうです。大工は出てきません。

貞山によるとこの「絵図面盗まず」の型は、実父七代目貞山の型でそのままやっているとのことです。

チラシも作り直しました。失礼を致しました。

 

で、貞山が真打昇進して貞山を襲名した録音も聞きましたが、仰る通り「絵図面盗まず」で、記憶がイイカゲンで

恥ずかしい思いです。

 

言い訳のようで恐縮ですが出版物を検証しましょう。

講談社(前身の大日本雄弁会講談社も含め)は数多くの『義士伝』を繰り返し出版し今でも古本屋で最も手に入りやすい講談速記本と言えば

講談社本でしょう。これがクセモノです。

昭和4年刊の【講談全集第3巻】の『赤穂義士銘々伝』の岡野金右衛門は「絵図面盗み」型で、桃川如燕演としてあります。

この如燕は二代目。義士伝で売った名人です。三代目の桃川如燕は五代目神田伯山、これは余談。

戦後の昭和29年七月刊行の【講談全集第9巻】「赤穂義士銘々伝」では、演者名なしで

上記の如燕版がそのまま載っております。即ち「絵図面盗み」型。

さらに昭和46年2月刊行の【定本講談名作全集第7巻】「赤穂義士銘々伝」では演者名が復活しておりますが、

何故か一龍齋貞丈!内容は何と上記の如燕版そのまま!即ち「絵図面盗み」型。

一体どうなってるんだ!と思います。昭和46年の本で一龍齋貞丈と書いてあったら「ああ、あの”金色夜叉”の貞丈先生は

こうやったのか」と思ってしまうのは当然でしょう。

以上が、講談社本。それならばと現貞山の実父七代目の師匠、六代目貞山はどうなのか?

六代目の岡野は録音がありません。大阪の昭和書房から出版の昭和14年9月初版の【赤穂四十七士】

という本が一龍齋貞山口演と明記されております。ここでは岡野金右衛門の章は酒屋に化ける金右衛門の父の話が

主で、酒屋に化ける話は解説のみ、しかもご丁寧に大工の娘と恋仲に……と「絵図面盗み」型!

「絵図面盗まず」の原点はどこにあるのでしょうか?どっかにあるんでしょう。

速記本とは言え、読み物としての出版物ですから結構演者の記名がイイカゲンだったり(有名な演者の方が売れるから)することは

ままあります。

 

七代目によると如何に大工の棟梁とは言え、大切な屋敷の絵図面(しかも討入を警戒している最中の吉良邸)を所有したままというのは?

ということなのだそうです。しかし大工の娘を篭絡して絵図面を盗ませるというのも俗っぽいながら捨て難い。

廣澤菊春先生のも無論「絵図面盗み」型。『恋慕月夜』と題して主役が大工の棟梁と娘になっていて、これまた素晴らしいものです。

 

2019年12月22日(日曜日)会場:お江戸日本橋亭

三部構成です。午前11時開演で午後3時半終演予定。

前売り4000円、当日4500円

超豪華メンバーでお送りする演芸大忠臣蔵。

 

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