道路交通法27条(他の車両に追いつかれた車両の義務)について

一言で言えば
1項は加速するな
2項は左端に寄せて進路を譲れ
 
ただ、のんきにまっすぐ走る前車ですら義務を課す珍しいルールです。
条件が複数あり、議論に発展する条文。
こんなルールで捕まる人はほぼ居ない現実。
マナー的なルールと考えてよろしいかと。
 
そんなルールをガチで考えてみました。
以下こんな感じで考えております。
アドバイス、反論、賛成、疑問、質問、色々募集中です。
 
では本題。
 

 1項 加速してはならない義務

 

 車両(道路運送法第九条第一項 に規定する一般乗合旅客自動車運送事業者による同法第五条第一項第三号 に規定する路線定期運行又は同法第三条第二号 に掲げる特定旅客自動車運送事業の用に供する自動車(以下「乗合自動車」という。)及びトロリーバスを除く。)は、

バスは運行時間が決められているためバスは除外されています。
 

第二十二条第一項の規定に基づく政令で定める最高速度(以下この条において「最高速度」という。)

車両の区分を分ける為の条文です。
決して速度超過を除くという文章ではありません
政令で定める最高速度とは
自動車60km/h
原付30km/h
制限速度の標識などは一切関係ありません。
 
もう少し具体的に書くと道路交通法施行令に書かれている最高速度です。
つまり法定速度のこと
 
一般道では
・自動車60km/h
・原付30km/h
・車両総重量2t以下の車両を車両総重量が3倍の車両で牽引する時40km/h
・それ以外の牽引30km/h
・125cc以下の2輪(バイク・原付)が牽引する時は25km/h
・緊急車両80km/h
 
高速道路では
最高速度のうち、自動車が高速自動車国道の本線車道(次条に規定する本線車道を除く。次項において同じ。)を通行する場合の最高速度は、次の各号に掲げる自動車の区分に従い、それぞれ当該各号に定めるとおりとする。
  次に掲げる自動車 百キロメートル毎時
 大型自動車(三輪のもの並びに牽引するための構造及び装置を有し、かつ、牽引されるための構造及び装置を有する車両を牽引するものを除く。)のうち専ら人を運搬する構造のもの
 中型自動車(三輪のもの並びに牽引するための構造及び装置を有し、かつ、牽引されるための構造及び装置を有する車両を牽引するものを除く。)のうち、専ら人を運搬する構造のもの又は車両総重量が八千キログラム未満、最大積載重量が五千キログラム未満及び乗車定員が十人以下のもの
 普通自動車(三輪のもの並びに牽引するための構造及び装置を有し、かつ、牽引されるための構造及び装置を有する車両を牽引するものを除く。)
 大型自動二輪車
 普通自動二輪車
  前号イからホまでに掲げる自動車以外の自動車 八十キロメートル毎時
  法第三十九条第一項 の緊急自動車が高速自動車国道の本線車道を通行する場合の最高速度は、第十二条第一項及び前項の規定にかかわらず、百キロメートル毎時とする。
 
 
これが27条における最高速度における車両区分です。
牽引まで書いたり、高速道路まで話をするとややこしいので
 
原付30km/h 自動車60km/hしか登場させません
 
 

ポイント

  • 制限速度30km/hの道路であったとしても
  • 原付と自動車の関係は
  • 原付:最高速度の低い車両
  • 自動車:最高速度の高い車両
  • となります。
  • どちらも30km/hしか出せないのにも関わらず。
※自転車には法定速度はありませんので
最高速度が高い、低いは関係ありませんので
義務自体存在しません。
 
 

 最高速度が高い車両に追いつかれたときは、その追いついた車両が当該車両の追越しを終わるまで速度を増してはならない。

・追いつかれたとは26条の適正な車間距離以内という意味。
・最高速度が高い車両に追いつかれたとは
前車が原付、後車が自動車です。
追いつかれたときから追越しを終わるまで速度を増してはならないのです。
原付が時速25km/hで走行して追いつかれた状態から、
速度をあげたら違反となります。
原付が時速40km/hで違法に走行していたとしても
追いつかれたあとに加速すると27条違反となります。
原付には非常に厳しいルールです。
 

 最高速度が同じであるか又は低い車両に追いつかれ、かつ、その追いついた車両の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとするときも、同様とする。

・前車が自動車、後車も自動車
又は
前車自動車、後車は原付
の場合です。
 
・追いつかれたときではなく
追いつかれ、かつ、その追いついた車両の速度よりもおそい速度で引き続き
進行しようとするとき
という条件がつきます。
 
原付の場合と違い
追いつかれても加速する事は可能です。
では、加速してはいけない義務が発生するのはいつか?
となりますが
追越し時の危険防止のための条文なので
後車が追越しを開始したら加速してはいけません。
相手が違反だとしてもです。
 
原付の場合は、追いつかれる=速度をあげてはならない。
自動車の場合は、追越し開始されたら速度をあげてはならない。
という事になります。
 
 
 

 2項 譲る義務

 車両(乗合自動車及びトロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、

車両通行帯の設けられた道路とは
公安委員会が意思決定をし、
片側複数車線の道路の事ですが、
公安委員会が意思決定をしていないなんちゃって車両通行帯は
多く存在します。進行方向別通行区分や専用レーンが設置されている
道路は確実に車両通行帯のある道路です。
ややこしくなるので、複数車線があれば車両通行帯のある道路として
考えます。この場合を除きなので
 
2項は
片側1車線以下の道路という条件でのルールです。
 
※1項は全ての道路に適用されますので
片側1車線であっても加速してはならない義務は
当然発生します。
 

 最高速度が高い車両に追いつかれ、

原付自動車に追いつかれたという状態です。
 

 道路の中央(当該道路が一方通行となつているときは、当該道路の右側端。以下この項において同じ。)との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合においては、

追越すスペースが無い場合に譲ることで道路の円滑を目的としています。
十分な余地があれば譲る義務は発生しません。
後車はただ追越すだけです。
十分な余地が無い場合つまり、狭い道路の時に適用される義務です。
 
片側1車線道路で狭い道路の時という条件の下譲る義務を考えると言う事。
 

 第十八条第一項の規定にかかわらず、できる限り道路の左側端に寄つてこれに進路を譲らなければならない。

18条は左側寄り通行で左側端は自転車用スペースとして空けておくこと
その部分を除いてできる限り左寄りのルールです(道路幅員によっては
中央寄りを走行しなければならない事も多々あります。)
左側端を空けておくことで、急な飛び出しにも対応できます。
この18条のルールを除外して
車道左端に寄って
かつ
進路を譲らなければならない。
左端に寄るだけがルールではありません。
進路を譲ってこそ義務を果たす事になりますので、
生活道路においては徐行が必要になる事が多々あるでしょう。
(左端に寄るだけがルールだと思っている人もいるみたいです)
 
譲らなければならないとは、妨害してはならないよりも
より厳しい言葉です。
追越し禁止道路において、後車に進路を譲るためには
一時停止をし、先に行かせる事まで必要とされるでしょう。
(一時停止をしてしまえば追越し違反とはならないので
譲ると言う行為はそこまで必要とされてしまいます。)
 
原付は追いつかれた状態なら譲らなければならない
という大変厳しいルールです。
おまけで取得できる免許なのでそんなものなんでしょうね。
 
※では、左端に寄れない時は?
工事や歩行者、駐停車車両がある時もあるでしょう。
この場合は、ただちに違反とはならずに
左端に寄れる所まで進んでから譲らなければならない
もちろん1項の義務により追いつかれた原付は加速も出来ない
辛抱が必要となります。
 

 最高速度が同じであるか又は低い車両に追いつかれ、

1項と同じです。
前車が自動車、後車が自動車 又は 前車自動車、後車原付です。
 

 道路の中央との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合において、

前段と同じです
 

 その追いついた車両の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとするときも、同様とする。

追いつかれ、遅い速度で引き続き進行しようとするとき
義務が発生します。
原付は追いつかれたとき、有無を言わさず義務発生ですが、
今回は追いつかれ、遅い速度で引き続き進行しようとするとき
と1つ条件が追加され、速度をあげる選択肢があります。
 
 

ポイント

  • 現実に追いつかれた=即義務発生
  • とはなりません。
  • 遅い速度で引き続き進行しようとするとき
  • に発生する義務です。
 
状況別に説明すると
 
・追いつかれてもなお、制限速度未満又は法定速度未満をキープするなら
遅い速度で引き続き進行しようとするときになります。
義務ありです
 
・追いつかれて、制限速度又は法定速度まで速度をあげた時は
後車もこれ以上出す事は無いと信頼して十分です。
まだ義務は発生しません
 
・そもそも速度超過していて、さらに上を行く速度超過に
追いつかれたときは、義務ありと判断するしかないでしょう。
 
最初から、制限速度又は法定速度の場合もやはり
後車と同じ速度と信頼して十分です。
メーターの誤差やタイヤの状態、
又は、うっかり速度を出し過ぎてしまったんだろう。
今後は追従するだろうと信頼して十分です。
まだ義務は発生しません
 
なぜ制限速度又は法定速度で走行すると
まだ」義務が発生しないのか?という疑問がわきます。
 
なによりも現実に追いつかれている事実があるのでは?
と考えがちですが
追いつかれた現実つまり譲る義務がある!ということなら
自動車は原付と同じ対応しろと言っている事になりますので
この考えは消極的に解さざるを得ない。
 
引き続き遅い速度という条件がある事から
原付と同じ対応なわけがありません。
 
「その追いついた車両の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとするとき」
とは
・前車の義務なので前車が判断しなければなりません。
・法の趣旨である安全かつ円滑を遵守して考える。
・車検を通過している以上、速度計を信頼する事は可能。
以上3点より
前車が制限速度又は法定速度で走行していれば
後車が違反してまで追越してくる事を想定しなくても良いです。
違反車両には法律は適用しないのか!?
と思考停止的に考える人がいますがそういう事ではありません。
 
前車の義務としては十分対応していると言う事。
後車が速度超過してまで追越してこないだろうと信頼して十分。
信号無視して突っ込んでくる事を想定して青信号で一時停止しますか?
この信頼の原則を27条だけ無視する事は不条理です。
 
制限速度又は法定速度で走行している時は
まだ義務は発生しないと書いていましたが
ではいつなら義務が発生するの?
という疑問がでます。
 
法定速度又は制限速度で走行していても
追いついた車両の速度よりも遅い速度で引き続き進行しようとするとき
に当たる場合はどういう状態なのか?
それは、
後車が追越しを開始したとき、遅い速度だと確定します。
後車が違反だとしても
これはもう引き続き遅い速度であるという事実ですから。
前車の引き続き遅い速度で進行しようとしないという意志は
はかなくも崩れ去ります。
速度超過はしてまで追越してこないだろう。追従してくるだろう
という信頼は見事に裏切られた場合
引き続き遅い速度であると言う事になります。
 
では
追越しのどの段階で確定するのか?
右合図だしただけでは右折との判断がつきませんが
右合図出しながら徐行へ向かわなければ追越ししかあり得ません。
後車が追越しを開始したと言う事は加速も出来ません。
 
ダブルパンチで引き続き遅い速度確定です
 
合図も出さずに追越しを開始し
いきなり反対車線に後車が移動した場合は
後車の進路は反対車線と言う事になりますので
前車は譲りたくても進路自体が異なるので
義務は消失します。
(前車は当然加速したら駄目ですが。)
ですので、ちゃんと合図は3秒ルールを守り
正しく使いましょう。
 
 
違反だから義務が無いという短絡的な話ではありません。
あくまでも
追いついた車両の速度よりも遅い速度で引き続き進行しようとするとき
義務が発生します。
 
現実に遅い速度で進行する事が確定したら
遅い速度で引き続き進行しようとするときになります。
 
 

 細かいけど、こんな場合は?という事を何点か。

左端に寄るスペースが無い場合
2項前段と同じく、スペースが出来てから譲る事になります。
 
追いついた車両が追従している場合も義務はありませんが
前車が最高速度又は制限速度よりも下がったら
2項の義務は発生します。譲らなければなりません。
 
前車の前にも沢山の車列がある時
全ての車両が制限速度以下又は法定速度以下であっても
追越しには安全な速度と方法が求められますので
前車の前に車両があるので、追越しはしてこないと
信頼して十分です。
もちろん、それでもなお追越しをかけてくるようならば
義務は発生してしまいますので譲りましょう。
 
後車が50ccなのか90ccなのか判別がつかない場合
であっても、同じです。
前車が最高速度又は制限速度未満で走り続けるなら義務は発生します。
前車が最高速度又は制限速度で走り続けるなら一旦義務はありません。
後車が追越しをかけてくるならば義務は発生します。
50ccなのか90ccなのか考える必要はありません。
条文通り義務を果たすのみです。
追いついただけで義務を主張する人がいますが
前車が原付の場合なので無視しましょう。
追いつく+遅い速度で進行しようとする
2つの条件が成立したら義務が発生します。
 
追越し禁止道路ではどうか?
追越しをかけてくる後車は違反ですが
制限速度未満で走行する場合は進路を譲らなければなりません
進路を譲るためには後車に違反をさせるような行為は
譲るとは言えません。
一時停止してしまえば後車は違反することなく追越せますので
譲ると言う事は一時停止まで必要と言う事になるでしょう。
制限速度で走行している場合は、追いつかれても譲る義務は「まだ」発生しません。
後車が追越しを無謀にもかけて来たら譲らなければなりません。
前車の義務としてはどうしても発生してしまうのです。
追越し違反は進路変更時点で違反となるので
後車は違反確定ですが、譲らなければ前車も違反となります。
左端に寄れない状況なら後車は違反とはならない。
 
 

 煽る行為は? 後車の意思表示

いくら煽ったところで、それは何の意思表示なのでしょうか?
・速度をあげろ?
・譲れ?
・てめぇムカつく運転してんじゃねーよ
など、色々な状況に応じて意味が異なります。
 
無駄な煽り行為は無意味です。
 
前車が最高速度未満の場合に限り
後車は右合図をつけて、右に寄り車間を維持する。
それでも譲らなければ
進路を戻さなければならない。
また右合図をつけて右に寄り車間を維持する
それでも譲らない。
パッシングしても良いでしょう。
ここまでキッチリやれば
見た目には煽り運転ですが
煽っているわけではありません。
煽らされているんです。
 

ポイント

  • 車間を詰める必要はありません。
  • 右合図をつけた場合、右折なら減速します。
  • 減速しない場合は追越しと考えるしかありません。
こんな事を考える前に普通は追越して行きます。
それで十分なんですが。。
 
 
27条は加速厳禁、譲る義務以外にも、重要な役割があります。
 
キッチリ法定速度又は制限速度で走行しましょうね!
 
という意味も含まれると考えています。
 
条文には22条で最高速度を超えてはいけないしか
書かれていませんが
最高速度未満で走行する場合は
加速出来ない
譲らなければならない
という義務が生じてしまうのです。
こんな譲ってばかりでは運転しずらいので
 
キッチリ、ピッタリ 一定の速度で
法定速度又は制限速度を守る事が大切だと考えます。
 

 22条を遵守した上でのルールなのかどうか考察

 
条文だけを読む限り、速度に関する記述がない以上
27条2項は発生するという考えになるのはしょうがない。
 
各種コンメンタールの情報を記載しますね。
 
 

 判例タイムズ38

二十追越しの場合についてこんな記述があります。
「二重追越しの場合には、
適法な追越しを前提とする法27条の被追越車の避譲義務は、
そのまま適用されることはないと見るべきであろう」
 
違反として逮捕することは少ない27条ですが
過失割合の判断基準にはよく使われそうですね。
判例タイムズは適法な追越しを前提としているので
当然制限速度以下という見解です。
 

 道路交通法の解説 十一訂版

「連続して進行する車両のうち連続車両が制限速度いないで進行していて、
先行車両に接近した場合の先行車両の義務を規定しています。」
この本も、制限速度以下と明言しています。

 道路交通法とその運用

「追いついた車両を安全に追い越しまたは追い抜きをさせるための前者の義務である」
 
安全に追越し追抜きさせるためなので
この知恵ノートと同様の見解であると思います。
俺的見解は一言でいうと、制限速度なら引き続き遅い速度とはならないが
違法であったとしても追越しをかけられた場合は義務は発生する。

 執務資料 道路交通法解説16-2訂版

ちょいと1項の話に戻りますが
原付は追いつかれた段階で速度を上げてはいけない。
お互い制限速度未満だったとしてもです。
それに対して、↓は同順位又は低順位に追いつかれた場合の解説です
 
追いつかれた車両は、追いつかれた場合に追いついた車両の
現実の速度を超える速度で進行を開始すれば、右の義務は生じないことになる。
なお、この場合、追いついた車両が法定の最高速度を超える速度で違法に
走行していたとしても、
なお追いつかれた車両に加速してはならない義務が
生ずるかどうかという点については、
若干の疑問はあるが、
法の趣旨から見て消極に解すべきであろう。(宮崎注解 s.41)
 
正直この文章読んで最初まったく意味が分かりませんでした。
必死に理解しようとしても、??でした。
俺的解説を踏まえてもう一度読んでみてください。
 
追いつかれた車両は、追いつかれた場合に追いついた車両の
現実の速度を超える速度で進行を開始すれば、右の義務は生じないことになる。」
(この後に、法定の最高速度を超える速度について記述してあることから
↑の部分は、制限未満から制限までしか想定してない事が分かる。
原付は追いつかれただけで強制的に加速厳禁ですが、
自動車はおそい速度で引き続きにあたるか否かを考えなければなりません
もちろん追越し開始されたら加速厳禁ですよ。)
 
なお、この場合、追いついた車両が法定の最高速度を超える速度で違法に
走行していたとしても、
(それでもなお速度超過で迫ってくる車両に対して
引き続き遅い速度となるのかを考えさせる文章だと思って
読んでくれると理解しやすいです。)
 
なお追いつかれた車両に加速してはならない義務が
生ずるかどうかという点については、
(義務が生ずるかどうかは、引き続き遅い速度かどうかで
判断しなければなりません。)
 
若干の疑問はあるが、
法の趣旨から見て消極に解すべきであろう。(宮崎注解 s.41)
(若干の疑問は当然あるけども、引き続き遅い速度とは
ならないだろうということです。
俺的見解では、この後実際に追越しを開始されれば、
完全に遅い速度で進行しようとするときにならない。
なぜなら、追越し開始されたらそれは明確な事実だから。)
 
 
なぜ、ここでわざわざ1項の解説を載せたのかといいますと。
次にも出てきますが
「現実の速度」とはなんぞや?
という事になるからです。
 
この1項の解説を読む限り、先生方の使う現実の速度とは
あくまでも、法の範疇である制限速度以内という事になります。
 
 
執務資料の2項の部分にはこんな解説があります。
 
「進路を譲る義務は、双方の車両の現実の速度の如何を問わず、
後順位の車両は、進路を譲らなければならないことになる。
したがって、同順位又は後順位の車両に追いつかれた場合は、
その追いついた車両の速度を超える速度で進行すれば、
後車に進路を譲る義務は生じない。
後車の現実の速度よりも遅い速度で引き続き進行しようとする場合に、
初めて進路を譲る義務が生ずる。(横井注釈 s.42)
 
ここでも現実の速度という言葉が出てきます。
制限速度内という条件での解説だと理解し、
おそい速度で引き続き進行しようとする場合に当たるか否かを
考えつつ読むと理解できると思います。
 
法律の改正とともに横井注釈を俺的解説を付けくわえながら
見てみましょう。
 

道路交通法の変遷

大正9年 道路取締令
昭和22年 道路交通取締法
昭和35年 道路交通法(条解道路交通法 宮崎清文 s.38)
昭和39年 27条改正   (注解道路交通法 宮崎清文 s.41)
 
 
 

道路取締令

  • 第四條 牛、馬、諸車等行逢フトキハ互ニ左方ニ避譲スヘシ
  • こんな、時代もあったんですね。
 

道路交通取締法

  • 第十六條 車馬及び軌道車相互の間の通行の順位は、左の各号の順序とする。

     緊急自動車
    二 緊急自動車以外の自動車及び軌道車
    三 自動車以外の車馬
    車馬又は軌道車は前項の定める先順位の自動車又は軌道車に進路を譲らなければならない。
     
    優先順位の車両に追いつかれた場合のみ避譲義務を課していた。
    加速の義務なんてまだない時代です。
 
 

道路交通法 改正前

 
道路交通法ができたものの、避譲義務しかまだありません。
この件について 条解道路交通法 再訂版 宮崎清文先生の解説では
 
後順位の車両は、進路を譲らなければならない。
もちろん、追いつかれた以上は、現実にも、後順位の車両の方が低速で進行していたことは明らかであるが、
 
その場合、追いついた先順位の車両が、現実に、低順位の車両について定められている最高速度を下廻る速度で進行している(したがって、低順位の車両がさらにそれを下廻る速度で進行している)場合にあっても同様である。
(どちらも制限速度未満だったとしても原付は追いつかれたなら譲らなければならないってことね)
 
これに対し、同順位又は後順位の車両に追いつかれた場合は、
前者は、その追いついた車両の現実の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとする場合においてはじめて、進路を譲る義務が生ずることになるわけである(したがって、追いつかれたときに、その追いついた車両の速度をこえる速度で進行を開始すれば、右の義務は生じない。) (宮崎条解 s.38)
(この時はまだ、現実の速度という言葉は使われていません。
常識的に言えば制限速度まで加速すれば生じないと考えるんだけど
 
  • 車両(道路運送法第3条第2項第1号 に規定する一般乗合旅客自動車運送事業者又は同条第3項第1号に掲げる特定旅客自動車運送事業の用に供する自動車(以下「乗合自動車」という。)及びトロリーバスを除く。)は、車両通行区分帯の設けられた道路を通行する場合を除き、第十八条に規定する通行の優先順位(以下「優先順位」という。)
  • が先である車両に追いつかれ、かつ、道路の中央との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合においては、道路の左側に寄ってこれに進路を譲らなければならない。優先順位が同じであるか又は後である車両に追いつかれ、かつ、
  • 道路の中央との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合において、その追いついた車両の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとするときも
  • 同様とする。
 

そして現在の27条 昭和39年から変わりました。

この本はどこにもなくて、読んでませんので書けませんが
横井注釈は載せておきます。
 
注釈道路交通法 再訂版 横井大三 s.42年
 
「双方の車両の現実の速度の如何を問わず、後順位の車両は、
双方の車両の現実の速度の如何を問わず、後順位の車両は、
進路を譲らなければなないことになる。
(これも、原付は有無を言わさず譲れということ。
制限速度30キロの道路を原付が10キロで走行中
自動車が15キロでどちらも、トロくさい状況であっても
譲らなければならない)
 
 
従って、同順位または後順位の車両に追いつかれた場合は、
その追いついた車両の速度をこえる速度で進行すれば、
後者に進路を譲る義務は生じない。
(おそい速度で引き続き進行しようとしなければ義務はないってこと)
 
 
後者の現実の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとする場合に、
はじめて進路を譲る義務を生ずる。
  • 注解道路交通法 宮崎清文先生の新しい(s.41年だけど)解説書では
こんな感じでルールが変遷してます。考える参考になれば
 
 
この意見が100%あっているという事にはなりません。
27条に関して具体的に書いてある資料がなく
ガチで考え込んでみた結果こんな感じになりました。
最後まで読んでくれてありがとうございました